女性の非正規雇用者の失職が目立って増えた
こうした仕事への大きな影響により失職した者も多い。最後に、どのような者が職を失ったのかを見てみよう。
労働力調査では正規・非正規別、年齢別の雇用者数を集計している。ここでは、過去1年間の雇用者数の増減を2018~19年は年単位、2020年は四半期別に掲げた(図表5参照)。
2010年代の前半までは若者を中心に正規雇用者が減少する一方で非正規雇用者が増え、非正規比率の上昇が目立っていたが、2018~19年には、状況は変化し、高齢化に伴う労働力不足の展望から若年層を含めて正規雇用者が非正規雇用者と同じように増加する傾向となっていた。そして、非正規雇用者の増加の中心は定年後再雇用などによる65歳以上の高齢就業者が中心を占めるようになっていた。
2020年に入り、コロナの感染拡大がはじまって以降、こうした状況は大きく変貌を遂げた。
正規雇用者は相変わらず拡大を継続する一方で、非正規雇用者が急減し始めたのである。非正規雇用者の男女・年齢別の内訳に着目すると、女性の若年層や中年層が、特に、大きく減少している点が目立っている。
上(図表4)で見たように、仕事が大きく縮小した業種は「宿泊業」「飲食店」「娯楽業」などであるが、こうした業種には女性の非正規雇用者が多いことが、女性の非正規雇用者の急減の要因となっている。
「正規」を増やす一方、パート・アルバイトなどの「非正規」をクビに
また、非正規の減少は、正規を増やし続けているからという側面も見逃せない。
正規が増え続け、非正規のみが減っているのは、コロナの影響による労働需要の減少に対して、パート、アルバイトなどの非正規雇用を大きく整理し、正規雇用者はむしろ残したり増やしたりして現状または将来の労力不足に備えるという行動を企業がとっているからではないかと想像される。
政府は、経営が悪化した企業に対する雇用を維持するための「雇用調整助成金」について、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への特例措置として、ひとり1日当たり8330円の助成金の上限額を1万5000円に、従業員に支払った休業手当などの助成率を、大企業は50%から75%、中小企業は3分の2から100%にそれぞれ引き上げているが、正規雇用の増については、こうした措置の影響もあろう。特例措置は、パートやアルバイトなど雇用保険に入っていない人を休業させた場合も対象となるが、やはり、非正規より正規の雇用維持につながっているのではないかと考えられる。
こうした動きの結果、少なくとも2020年の年平均では非正規雇用比率はリーマンショックの時のようにかなり低下するものと見込まれる。高齢化に伴う今後の労働力不足を踏まえると、この低下は一時的なものにとどまらない可能性が高い。