ホテル・旅館、飲食店、娯楽業でコロナの影響は半端でなかった

次に、どんな産業、どんな仕事への影響が大きかったかを見てみよう。

総務省統計局が行っている労働力調査では、各月の月末1週間の就業状態を調べており、各人の労働時間を総集計した延週間就業時間の値を産業別に公表している。これには就業者数の増減と就業時間の増減が両方ミックスされており、各産業の業況を端的に示すものとなっている。なお、休業者は就業時間ゼロであり、休業者が増えれば平均の就業時間も減る。

どんな仕事がどれほど減ったか:宿泊業、飲食店、娯楽業で一時期半減

ここでは、主要産業の延週間就業時間の対前年同月比の推移を追っている(図表4参照)。Y軸のスケールはプラスマイナス80%の幅に統一しているので各産業の業況推移の違いを比較することができる。

産業計では、緊急事態宣言が出ていた4~5月の就業時間の減少はほぼ1割であった。GDPの落ち込みが図表2で見たようにこの時期約1割だったのとほぼ一致している。

落ち込みが大きかったのは「宿泊業」「飲食店」「娯楽業」

しかし、産業別に見ると影響の大きかった業種もあれば、影響が小さかった業種もある。

延週間就業時間の落ち込みが5割前後と大きかったのは「宿泊業」「飲食店」「娯楽業」などである。これは、上で見た家計支出の動きとも対応している。そして、年末にかけて「飲食店」「娯楽業」では落ち込み幅が縮小する傾向にあった。

「製造業」や「卸・小売業」はこれら3業種と比較すると、最大の落ち込み幅が1割前後と比較的小さいが、全体の推移は、似たパターンである。

「農林業」「医療業」「公務」などは就業時間の面ではあまりコロナの影響は認められない。医療では受診控えがあっても診療を休むわけには行かず、また、感染症対応の医療分野ではむしろ忙しくなっているためと考えられる。

一方、コロナの影響でむしろ仕事が増えている業種の典型としては「通信業」が挙げられる。リモートワークやオンライン会議・授業、インターネット販売への対応として出番が多くなったためであろう。