GDP規模は1割程度落ち込み、回復はなお半分に満たない

コロナの感染拡大による経済の落ち込みはどの程度だったのであろうか。経済の総合指標としてまず取り上げられるGDPで見てみよう。

GDPは精度の関係もあって月別ではなく最短で四半期ごとに集計される。通常、発表されるGDPの動きは四半期別の季節調整済みの実質GDPの伸び率(しかも年率換算)である。

伸び率の指標は経済が順調に成長しているか、していないかを測るには適している。しかし、災害や感染症など突然のショックの影響でどのくらい経済が落ち込んだか、またどのくらい回復したのかを知るには、実数そのものの推移を見た方がよい。また、そういう場合は、指標化するにしても伸び率では分かりにくく、かえって対前年同期比の方が適している。

そこでここで掲げたのは、実数の動きと対前年同期比の各国比較である(図表2参照)。

欧米より感染規模は小さいが経済の落ち込みは欧米と同等水準

コロナショックによる経済の落ち込みがリーマンショックに匹敵する規模であり、しかも直前の消費税引き上げによる落ち込みと合わせるとリーマンショックを上回る規模であることが一目瞭然である。

緊急事態宣言が出された2020年4~6月期の対前年同期比はマイナス10.3%であり、その後、7~9月期には大きく回復したとはいえ、マイナス5.7%にとどまっている。すなわち回復はなお落ち込み幅の半分に満たないのである。

感染拡大でGDPで1割もの経済の落ち込み

日本の経済の落ち込みを他国と比較してみると、感染拡大を早々に収束させた中国が4~6月期から対前年同期比でプラスに転じているのは例外として、日本や欧米主要国について、4~6月期に1割から2割の落ち込み、その後、大きく回復という流れは共通である。

日本は欧米と比較して感染規模では大きく下回っているのに、経済の落ち込みでは欧米と同等水準である。また7~9月期の回復度は、おおむね、欧米より弱くなっている。日本の経済パフォーマンスは、感染被害の相対的な軽さとは裏腹に、かなり厳しいものがあると判断できよう。