「なぜ生え抜きの私が優遇されないんだ」と退職
ほぼ一昔前の2008年秋から始まったリーマンショックの時に、生き残り策の一環としてのリストラや割り増し退職金による早期退職勧奨が多くの企業で実施されました。
そして今、先の見えてこないコロナ禍によってあの事態が再来する可能性が濃厚になっています。実際に早期退職に応募した結果、明暗が分かれたケースは少なくありません。ここでは実例に基づく、早期退職後の失敗例の中から、特に管理職世代を中心に紹介したいと思います。なお、年齢と役職は退職時のものです。
【事例1】処遇への不満からの選択
・55歳営業企画部部長
「なんで生え抜きの私が彼の下風に立たなくてはいけないのか!」彼の不満は企画部生え抜きの自分ではなく、他事業部から異動してきた「外様」が部のトップに就任したことでした。正直な話では実力差があることは認識しており、年齢も近いため、ほぼ自分が企画部長になる可能性が無くなったことは感じてはいたのですが、結局「この会社は自分のポテンシャルを活かせないダメな会社、組織だから」という結論に納得し、早期退職に応じました。できれば同業他社に再就職をして見返してやると考えていましたが、10カ月間の再就職活動は全て虚しい結果となり、ようやく異業種で契約社員として営業職に就いたそうです。
同業他社に転職できると思っていたのに…
【事例2】本音と建前の見極めの失敗
・52歳営業所長
「得意先だけでなく、競争相手の同業他社もことあるごとに私の営業センスを称賛してくれて、すぐにでもウチの会社で営業マンを鍛えてほしいと言われ続けていたんです」
「そりゃ、営業一本で首都圏の大型拠点長を同期のトップで就任したという自負がありましたし、まだまだ自分のノウハウやスキルは役に立つとも」
この営業所長は若くして所長に就任したものの、その後やや伸び悩んでいました。そこで「この好機を活かしてステップアップを目指す!」と早期退職に応じたのですが、見事な手のひら返しで同業他社への再就職は叶わず、結局は人材派遣会社の派遣社員に落ち着きました。