誰も予想できなかった特異な相場
2020年の株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済活動の停滞を背景に、きわめて激しい値動きとなった。しかし、その後は順調に値を戻し、米国の主要株式指数は史上最高値を更新するなど、大方の予想を超える株価の回復を示した。
3月以降の新型コロナ感染拡大や、世界各国でのロックダウンなどの状況を見れば、当時まさか年内に現在のような株価水準に戻すと予想していた人はほとんどいなかったはずだ。
世の中の動きを予測し、それを資産運用における投資判断に結びつけることはきわめて難しい。今回のような非常事態の環境、相場展開では、百戦錬磨のプロたちでも翻弄され、投資判断を間違え、大きな損失を出すことになった。
人間は同じ失敗をする…
ある程度経験を積んだ個人投資家にも同じことがいえる。経験を積むと、相応に自信が出てくる。また、成功体験もあるため自説を疑わなくなる。しかし、実はこのような投資家が最も危ない。
想定外の市場の動きを前に、冷静であったなら本来とれていたはずの行動ができず、自分自身を見失い、思わぬ損失を出すことになる。また、自前の投資判断はどうしても近視眼的になりがちで、目先のイベントや材料に振り回されるようになる。そして判断を間違い、大きな損失を出すケースも生じてくる。
そうならないようにするためには、まずは自分にふさわしい運用方針を確立し、忠実に実行する強い気持ちを持つことが肝要である。言うのは簡単だが、実はこれがいちばん難しい。なぜなら、「お金」が絡むからである。
お金が絡むと、人間はどうしても正しい判断をしづらくなる。まして資産運用となると、短期間でできるだけ多くを増やしたいと欲が出るのが人の常である。しかし、そんな簡単にいくはずがない。
それらのことを十分に理解しているにもかかわらず、なぜか人間は同じ失敗をする。不思議な生き物である。いわば「学習効果がない」といえる。