サービス料は「夢」を見させるためなのか

ホストクラブに行くお客様は、他のグループのホストクラブにも行く方がほとんどだ。それ故、うちの店のメニューをパッと見ると、他のお店に比べて高いという印象を抱いてしまう。となると、そこから自店の料金説明をすることが、会話の流れを悪くしてオーダーに辿り着きづらい。そんな声が現場のホストたちから上がった。店の常連さんたちは次第に慣れていくが、他のお店に通い慣れていたお客様からすると、逆にわかりづらい。そしてホストたちにとっては無駄な手間になってしまったのだ。

手塚マキ『新宿・歌舞伎町』(幻冬舎新書)
手塚マキ『新宿・歌舞伎町』(幻冬舎新書)

その結果、グループ内でも新しく出した2店は、結局、昔のわかりづらい会計制度を採用している。会計ルールに慣れれば、うちの方が断然いいと思う。でも他社と争う上で、他社のお店に通っているお客様に来てもらうため、「夜の戦略」に寄せたのだ。

ある大手グループの会長が「サービス料をなくしたら絶対に流行らない。夢を見させないといけない」と言っていた。「安いと一瞬思わせることが夢?」と私には意味がわからなかった。でも、もしその言葉を肯定的に捉えるのであれば、実際より少し安い金額を見せることがもたらす夢とは、ホストと仲良くなれたのは高いお金を払ったからじゃない、と少しでも思って貰うことなのだろうか。

ビジネス的な観点からすると、最初に提示された金額からオプションを付ける結果になるのはよくあることだと思う。そう実感したきっかけは父の葬儀だ。私たちは棺や骨壺の良し悪しなどわからない。でも、みなさまこちらをお選びになります。と言われたら、そちらに流されてしまう。なぜなら、親族が亡くなってすぐに冷静な判断なんてできないからだ。「あ~こうやって判断能力が弱いときに決断を迫るのは、我々が酔っぱらっているお客様とボトルを入れる、入れないとせめぎ合う精神状態のときと似ているんだろうな~」と当時はしみじみと思ったものだ。

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