提示されている記載通りなのに高いと感じるカラクリ
先ずは必ずつくセット料金7000円、そしておつまみなどお通し代のテーブルチャージ2000円が掛かる。飲み物はビール(1000円)を頼み、席に着いてくれる女の子もビール(1000円)を飲みたいというので注文する。しばらくして女の子が入れ替わりカクテル(1000円)を頼み、このままこの席で飲みたいというので、隣に居続けることができる権利の場内指名(3000円)を入れてあげる。ビールの追加注文を2杯(2000円)、女の子もお代わりを1回(1000円)頼む。
ここで会計をする。時間は21時30分になっていた。掛かった総額は、セット料金:7000円+テーブルチャージ:2000円+延長30分:4000円+飲み物代:6000円+場内指名料:3000円=2万2000円。それにサービス料20%を掛けると2万6400円、消費税を掛けて2万9040円となる(図表2)。
提示されている記載通りの会計はこうなる。決してぼったくっている訳ではないが、正直わかりづらい。酔っぱらった勢いで気持ちが大きくなってしまっている状態で、注文するたびにメニューに記載の料金にサービス料を掛けた計算ができるだろうか。そんな細かい計算は慣れないとなかなかできない。
ホストクラブでも、この慣例はずっとあって、会計時に「こんなに高いとは思わなかった」という揉め事を幾度となく見てきた。それを防ぐために、ホストたちは、お客様がお酒をオーダーするときに、わざわざ店の内勤者に、「○○をオーダーしたら会計はいくらになりますか?」と聞きに来る。お客様にも店舗にとっても手間なのだ。
明朗会計にすると「高いから注文したくない」と言われる
サービス料という夜の店の“戦略”を撤廃してみるとうちのグループは、この水商売特有とも思われる会計の複雑さ故の、不明瞭感を払拭するために、サービス料というルールを撤廃した。同時にテーブルチャージ、指名料というものもすべて撤廃し、メニュー表に載せる金額=会計になるようにした。
グループ全店で明瞭な会計ルールを実行したところ……起きた問題は「高い」だった。お客様からも「高いから注文したくない」、ホストからは「高いからお客様にお酒の催促がしづらく売上が上がらない」と言われたのだ。おかしな話である。料金は変わっていない。変えたのは表記だけだ。メニュー表示は確かに高くなる。今まで10万円と表示していたシャンパンは、13万5000円(+税)という表記になる。それが「高い」イメージを与えるから嫌だと言うのだ。