●賢い脅しは面目を保つ

賢い脅しは、あなたの面目を保ってくれる。交渉で脅しを深刻に受け取らせるためには、要求に応じない場合の結果が相手にとって意味のあることでなくてはいけない。

賢い脅しは、相手の面目も保てるようにしてくれる。あなたにとって同等の価値を持つ代わりの要求を出すことによって、相手が要求に応じやすいようにもっていこう。最も受け入れやすい要求を相手に選ばせることで、相手が誇りを失わずに要求に応じられるようにするのである。相手が「要求に応じることは強いられた譲歩ではなく、こちらの好意である」と感じるように、脅しの文言を組み立てよう。どちらの当事者も面目を保てるようにすることで、敬意と好感の両方を勝ち取る可能性を高めることができる。

●賢い脅しは正確である

賢い脅しは厳しい事態を明確に表現する。脅しをかけるときには、相手があなたの要求に応じなければ、どのような結果が生じるかを具体的に説明しよう。自分の要求を正確に伝えることで、相手があなたの期待に応える可能性を高めることができる。さらに、明確なタイム・スケジュールと、脅しの結果を避けるための逃げ道も相手に示してやる必要がある。

それを行うためには、自分が何を求めていて、それをいつ手に入れたいのかを先に知っていなければならない。たとえば、次のような伝え方が考えられる。「必要な資料を月末までにいただけない場合には、われわれはサービスを打ち切って、法的措置を検討しなければなりません。しかし、この期限を守ってくださるなら、当初の契約どおり取引を続けます」。

マキャベリは、「私は脅しや侮蔑的な表現を慎むことを人間の賢明さの証とみなしている」と述べている。危険性を含んだ、それでいて便利な脅しの性質ゆえに、脅しは思慮深く慎重に用いられなくてはいけない。目標は反発をともなわない実行、報復をともなわない合意、屈辱をともなわない敬意を勝ち取ることだ。

脅しを賢明に使うことで、あなたは握手も微笑みもある合意に達することができる。

(文=アダム・D・ガリンスキー、ケイティ・A・リルイェンキスト 翻訳=ディプロマット)