財政赤字、日銀リスクの増大…長期的には、未来のツケ回し

このように景気回復という観点からは、成果を出したアベノミクスでしたが、長期的な視点からはとても及第点は与えられません。及第点どころか、リスクを大きく増加させたと言えます。

リスク増大の筆頭は言うまでもなく、財政赤字です。国債発行残高は政権発足時の2012年度末で705兆円だったものが、20年度末の推計では、964兆円と大幅に増加しています。新型コロナウイルスへの対策での上乗せもあり、数字はさらに大きなものになります。

対名目GDP比で財政赤字の規模を計ることが多いのですが、日本は250%を超えており、先進国中ダントツの1位です。コロナウイルスへの対応で財政赤字が増加したイタリアでも160%程度、米国も財政赤字を増加させましたが、それでも130%を超えた程度で、いかに日本の財政赤字が多いかが分かります。

安倍政権の間に、消費税が2度増税されましたが焼け石に水でした。財政赤字残高は増加の一途です。これは私たちだけでなく、子供や孫たちが負担しなければならないものです。

政権が発足時と政権終了時の比較(財政)

続けて指摘したいのは、多くの人がほとんど気にしていないことです。それは日銀が抱えるリスクの急拡大。これも長期的には国家を揺るがす非常に危険な事案です。

2013年4月から「異次元緩和」が始まりました。これは具体的には「マネタリーベース」を増加させるということ。マネタリーベースとは、日銀が直接コントロールできる資金量のことで、「日銀券」と民間銀行が日銀に預ける「日銀当座預金」の残高を足したものです。それを当初は2年間で2倍に増加させるというものでした。主な手法としては、民間銀行が保有する国債を日銀が買い、その分の代わり金を日銀当座預金に振り込むというやり方です。

参議院選挙の結果に笑顔を見せる安倍晋三首相=2019年7月21日
参議院選挙の結果に笑顔を見せる安倍晋三首相=2019年7月21日(写真=日刊スポーツ/アフロ)

政権発足時の2012年12月は、日銀券が約88兆円、日銀当座預金残高は約43兆円の合計132兆円でした。そして、約2年後の2015年3月には、当初の目標通り2倍以上の282兆円に達しました。それでも、成長戦略が十分に機能しなかったこともあり、その後もマネタリーベースは増加し続け、現状は図表2にあるように、579兆円程度まで増加しています。

日銀が国債を買うことでマネタリーベース(日銀当座預金)をどんどん増加させているのですが、これは何を意味するのか。日銀はそれだけ国債を保有しているということです。また、最近は国債だけでなく、株式をETF(東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託)の形で購入したり、REIT(不動産投資信託)を購入したりしています。