うつ状態になると、悲観的な思考パターンで誤った判断をする

自殺というような極端な行動や判断でなくても、うつ状態になるとどうしても思考パターンが悲観的になり、誤った判断をしやすい。

たとえば、業績低迷の会社が早期退職者を募集するとしよう。それを聞いた社員は、ふだんなら、新たな就職先を探して応募する、会社に残るほうが有利か早期退職で退職金を多めにもらったほうが得か冷静に判断してからそれに応じる、といった行動ができる。

ところがうつ状態の時は、「自分は会社に邪魔になっている」「これは私をピンポイントで自主退職を促している」と悪いほうに考えてしまってしまう。条件的にそれが不利であっても、あるいは次の就職先のめどが立っていなくても退職に応じてしまう。

窓のそばに使い捨てマスクが置かれている
写真=iStock.com/flyparade
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さらにいうと、うつ病の時の悲観的思考として指摘できるのは、物事を疑うことができず、まだ決まったことではないのに、これしかないと思ってしまう、といった決めつけをすることが多いことだ。

経営判断をする立場にある人がこの状態になると、悲観的な判断しか思いつかなかったり、自分は悲観的すぎるのではないかと疑うことができなくなったりすることが多い。楽観的な可能性を示唆する周囲の意見を聞き入れなくなってしまう。

アメリカなどで、経営者がマイ精神科医を持つようにするのも、自分がうつ病などにならないようにというメンタルヘルスのためだけでなく、メンタルヘルスを健康に保つことで、自分の判断力を維持する、自分が悲観的になりがちになっていないかをモニターしてもらう、という狙いがある。

コロナ禍で人がコロナ鬱になりやすい理由

冒頭で触れた「コロナ鬱」の話に戻ろう。

私の見るところ、今回のコロナ禍やそれにまつわる自粛は、人をうつ状態にしやすくする要素がいくつもある。

その筆頭は、経済的不安や感染不安である。

セロトニンという神経伝達物質が足りなくなるとうつ病になることが知られている。今の多くのうつ病の治療薬は、それを増やすようなモデルなのだが、このセロトニンは不安を和らげる作用もある。

不安状態が続くとセロトニンが消費され、うつ状態やうつ病になりやすくなる。心配事があったり、周囲の雰囲気が悪かったりという、心理的な要因だけでなく、脳に対しても不安の多い時勢は決して好ましいものではない。