定年後に別居婚を選んだ熟年夫婦

一方、熟年になってから別居婚に切り替える人たちもいる。結婚して27年、夫は定年後、関東北部の実家で暮らし、妻は東京で分かれて生活している夫婦がいる。そんな状態が3年目に入り、妻のキョウコさん(57歳)は、非常に快適な日々を送っていると話す。

「仲が悪かったわけじゃないけど、定年後、夫が24時間家にいることを考えたらうんざりしていました(笑)。ところが定年になる3年前にひとり暮らしだった夫の母が亡くなって実家が空き家になったんです。売ることも考えたようですが、夫はときどき行って手入れしていました」

定年後、その実家で一緒に暮らさないかと言われたが、キョウコさんは拒否。彼女にはまだ仕事があったし、友だちもいる。ふたりで話し合った結果、夫は実家でひとりで暮らすと言い出した。

「夫は実家近辺に幼なじみもいますし、家庭菜園もやってみたい、と。凝り性なので今では家庭菜園ではなくて、もっと大きく農業に取り組むことにしたようです。長男は独立、私は大学生の長女とふたりで暮らしていますが、気楽な生活です。食事の支度ももうしないし、仕事帰りに友だちと会っても時間を気にすることもない。一種の卒婚状態ですね。こんなにうまく夫といい距離になれると思っていませんでした」

まるで新婚時代に戻ったかのよう

夫は月に一度くらい帰宅するが、お互いに久しぶりなので話も弾む。27年間の生活でたまっていったおりのようなものは一掃され、新婚時代に戻ったかのように感じられるとキョウコさんは言う。

「私もたまに夫のところに行ってみますが、仲間たちに囲まれて農業をやったり地域起こしに携わったりしている夫が楽しそうで、本当によかったなと思っています。残りの人生、お互いに好きなように生きていけたらいいですね」

子育てを終えたからこそ、心置きなく、それぞれが好きなように生きていく。離婚件数というのは、このところずっと横ばいなのだが、熟年に限っては増えているのが実態。だからこそ熟年別居をすることでふたりの関係を再構築していけば、新たなパートナーシップが生まれていくのではないだろうか。

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