人はなぜ不倫をするのか。社会学者の上野千鶴子氏は、「むしろ、不倫しない人はなぜしないのか。結婚して性的な身体の自由を手放すなんて恐ろしい」という。男女関係や不倫について20年以上取材を続ける、フリーライターの亀山早苗氏が話を聞いた——。
※本稿は、亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。
恋愛相手は“お友だち”
上野さんは、不倫という言葉が好きではないと言う。
そして彼女は、恋愛相手を「友だち」と称する。もちろん友だちはひとりである必要はない。これは「恋をする相手はひとりでなければならない」「性関係をもつ相手はひとりだけ」とする世間へのアンチテーゼなのかもしれない。
そして彼女は、恋愛相手を「友だち」と称する。もちろん友だちはひとりである必要はない。これは「恋をする相手はひとりでなければならない」「性関係をもつ相手はひとりだけ」とする世間へのアンチテーゼなのかもしれない。
【上野千鶴子氏】若いころは、こっちも高飛車なところがあったし、男たちとは「殺し合い」すれすれみたいな恋愛をしてきました。ただ女性学やフェミニズムと出合い、自分自身を受け入れることができるようになり、20代後半からは男との関係も安定してきましたね。
私は決して男嫌いではありません。男性は愛すべき生きものだと思っているし、尊敬できる男性もいる。年齢的に性欲は順調に落ちてきているけど、セックスも大好きですよ。
だけど、人と人との間に契約だの権利だの所有だのという関係が入るのが、どうしても認められない。だから結婚に魅力を感じたことは一度もありません。
恋愛は自由ですからね。私は恋愛相手を“お友だち”と言っています。ちょっと親しいお友だちもいれば、とーっても親しいお友だちもいて(笑)。お友だちならひとりである必要はありませんから。もちろん、人の気持ちは変わっていきます。私が変わる場合もあれば、相手の気持ちが離れていくこともある。それはもう、どうしようもないですね。嫉妬したって気持ちは戻らない。感情に鎖はつけられないですからね。そういうときは、人の気持ちは移ろうものよのうと、はらはらとひとり涙します。