なぜこの地上はバカな人間だらけなのか。バカはなぜバカなのか。バカを治す方法はあるのか。フランスの心理学者が、アメリカの哲学者に「バカの学問的な傾向と対策」を聞いた――。

※本稿はジャン=フランソワ・マルミオン編、田中裕子訳『「バカ」の研究』(亜紀書房)の一部を抜粋・編集したものです。

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バカの条件=「自分は特権を与えられるべき人間だ」

——あなたの理論によると、バカとはどういう人を指すのでしょう?

【ジェームズ】わたしがバカと呼んでいるのは、まずもって、自分を非の打ちどころがない、社会生活で特権を与えられるべき人間だと思いこんでいるような人です。男性に多くて、女性には比較的少ないと思います。典型的な例が、郵便局の窓口の列に割りこもうとするバカです。ふつうは緊急時や、立っているのがつらい妊娠中の女性に与えられるべき特権が、どういうわけか自分にも与えられるはずだと信じているのです。

なぜかというと、自分はほかの人間より金持ち、イケメン、あるいは頭がいいと考えているから。「おれの時間はおまえたちより貴重なんだ」というわけです。そこでもし誰かが「みんなと同じように列に並んでください」と訴えても知らんぷりをしたり、逆ギレしたり。こういう人は、単に他人を見下しているのではありません。むしろ、相手にするに値しないと思っているのです。「おれの素晴らしさをわからないやつらなど、まるで話にならない」というふうに。

——バカはどこで何をしていてもバカなのでしょうか?

【ジェームズ】そうとは限りません。たまたまタイミングが悪くてバカなふるまいをしてしまう者もいないわけではないと思います。たとえば、禁酒、禁煙、ダイエット中などでイライラしていたり、若気の至りだったり。ただ、わたしが思うに、本物のバカはほとんどの場所でバカなことをします。ただし、常に必ずというわけではありません。職場や街中ではバカだけど家庭ではそうではない、あるいはその逆、ということもありえます。100パーセントのバカはまずいないでしょう。例外はスターリンですけどね。頭のおかしい大量虐殺者であっただけでなく、どこで何をしていてもバカだったらしい。