あのミスチルがゲスい曲を歌った!

さて、ここまできれいな歌詞の応援ソングを紹介してきましたが、続いて登場するのはMr.Childrenの『everybody goes~秩序のない現代にドロップキック~』。今回の5曲の中では、一番ゲスい歌詞を持つ、異質な曲といえるでしょう(笑)。ここまで紹介した曲は「とにかく前を向いていこう」という内容ですが、4位はエネルギッシュなストレス発散ソングです。社会の中で、みんなが病んでいて、必死に生きている、ということを歌っています。「おまえも病んでいるんだよな」と理不尽なこととも共存できる曲。共感とはまた別のものです。

2番の歌詞にも注目を。幸せな家庭かと思いきや、裏で娘が学校をさぼってデートクラブに行っているというショッキングな内容。「裏ではみんなゲスいことをやっている」という、これは新しい価値観の提示ですよね。応援ソングというより「開き直っちまおうぜ」という意味合いが強いかもしれません。仕事がうまくいかなかったときに歌って、発散してください。「おまえらだってゲスいことをやってるじゃん。だったら俺も違う価値観で前を向いていく!」と気持ちをリセットできますよ。

この曲には、面白い制作エピソードがあり、ボーカルの桜井和寿がたった5分で作ったといわれています。それまでミスチルは『CROSS ROAD』『innocent world』『Tomorrow never knows』とヒット曲を連発。小林武史プロデュースで、美しいイントロから曲が始まり、「ミスチルといえば」が確立されていたときでした。

そこでこの曲を出してきた。それまでのきれいな曲を並べて「いや、俺らはそうじゃないよね」っていう意味も込められているのでしょう。退屈な音楽チャートに打撃を加えるような歌詞が登場するのも興味深い。これはミスチルにとっても「ガス抜きソング」だった、と私は見ています。ちなみに、この曲の次は『【es】 ~Theme of es~』とまたミスチルらしい曲がリリースされています。

「一番偉い人」とは、内閣総理大臣のこと

5位はとんねるずの『一番偉い人へ』。これはまさに今、新型コロナに苦しむ国内の状況と重なる部分があるかもしれません。タイトルにもある「一番偉い人」とは、総理大臣のことだといわれています。その偉い人へ、今何をすべきなのかを問う、サビの歌詞が印象的な曲です。

92年の発売で、作詞は今もその名をとどろかせる秋元康。当時のとんねるずは、パロディソングでヒットを飛ばしていた時代で、「真面目にふざける」というイメージがありました。2つ前のシングルは『情けねえ』で、尾崎豊と長渕剛に寄せた曲作りがされています。その次が『ガラガラヘビがやってくる』、そして『一番偉い人へ』、その後には『がじゃいも』と続きます。『ガラガラヘビ~』『がじゃいも』は、完全に悪ふざけで、キッズソングですね。その流れの中に、唐突に『一番偉い人へ』を差し込むようにリリースしています。

歌うと元気が出る歌・BEST5