ロジックでは説明できない「なんか面白い」「なんか惹かれる」という感覚。これらを生み出す「触媒」は、近頃の広告業界では重要なキーワードである。実はこの「触媒」、私たちがややこしい上司を説得するときにも役に立つという。

なぜ歯磨き粉はミント味なのか

人間の脳構造は、本能的かつ無意識に直感で判断する「動物的な脳」と、理性的かつ意識的で、思考したり言語化したりする「人間的な脳」に分かれています。理屈を超えて「なんかグッとくる」と、動物的な脳を刺激する感覚を、広告業界では「触媒」と呼んでいます。

会議場で聴衆の前で演説をする認識不能なビジネスマン
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触媒の具体例として、よく挙げられるのは「歯磨き粉のミント」です。歯磨き粉に含まれるミントには、歯を美しくしたり、健康にしたりする特段の機能はありません。ただ、磨いたときにスッキリする感覚を得られることから、「なんか歯がきれいになった気がする」「なんか口の中が健康的になった気がする」という印象に繋がります。慣れると(ミントがないと)「スッキリしない」「物足りない」と感じるようになり、クセになっている――これこそが触媒の魔力です。

今から100年ほど前、某ブランドが初めてミント入りの歯磨き粉を発売したところ、歯磨き粉が世界的に流行しました。それまで歯磨き粉は誰もが当たり前に使う商品ではなかったにもかかわらず、です。