ロジックでは説明できない「なんか面白い」「なんか惹かれる」という感覚。これらを生み出す「触媒」は、近頃の広告業界では重要なキーワードである。実はこの「触媒」、私たちがややこしい上司を説得するときにも役に立つという。

なぜ歯磨き粉はミント味なのか

人間の脳構造は、本能的かつ無意識に直感で判断する「動物的な脳」と、理性的かつ意識的で、思考したり言語化したりする「人間的な脳」に分かれています。理屈を超えて「なんかグッとくる」と、動物的な脳を刺激する感覚を、広告業界では「触媒」と呼んでいます。

会議場で聴衆の前で演説をする認識不能なビジネスマン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

触媒の具体例として、よく挙げられるのは「歯磨き粉のミント」です。歯磨き粉に含まれるミントには、歯を美しくしたり、健康にしたりする特段の機能はありません。ただ、磨いたときにスッキリする感覚を得られることから、「なんか歯がきれいになった気がする」「なんか口の中が健康的になった気がする」という印象に繋がります。慣れると(ミントがないと)「スッキリしない」「物足りない」と感じるようになり、クセになっている――これこそが触媒の魔力です。