しかし、それ以外の歌詞にご注目を。気の知れた仲間と、肩を並べて酒を飲むという歌い出しから始まり、ふと電車の窓に映る自分を褒めてあげよう、という内容。この曲は、真面目に頑張っている人への応援ソングなのです。改めて聞けば「この歌詞、泣ける」と目頭が熱くなりますよ。

まだ若かったあなたがこの曲を聞いたとき、これほどの感動を覚えたでしょうか。私自身、中学生だった頃にこの歌詞は刺さらなかった。それはまだ自分が幼く、人生経験も少なかったからでしょう。

この曲について小室哲哉は、意外にも吉田拓郎の世界観をイメージして作ったと明言しています。Aメロに出てくる「温泉」は、吉田の『旅の宿』に出てくる温泉のこと。70年代のポップアイコンであり、到底かなわないと思っていた吉田へのリスペクトを込め、小室が当時の世界観を90年代に持ってきたというわけです。

かつて小室がMCを務めた音楽番組では、ゲストの吉田が「おまえの曲で1曲だけすごくいいと思うのがある。俺は『WOW WAR TONIGHT』が大好きだ」という発言をしています。のちに小室自身も、「温泉を『旅の宿』で知り、吉田さんが好きな世代にも刺さるように選んだ」とのエピソードを語りました。

H jungle with tがダブルミリオンを遂げた12年後に、また社会人たちの胸を熱くさせるヒットソングが誕生しました。

『俺たちの明日』は、男の人生そのものだ

エレファントカシマシがリリースした『俺たちの明日』。「さあっ」という掛け声とともに、頑張ろうと直接エールを送る歌い出しが印象的です。タレント・加藤浩次が出演した「ウコンの力」のCMソングとしてもおなじみでした。この曲も、30代後半以降の、一生懸命働く人へ向けて歌っている曲です。

歌詞を紐解いていくと、1番は、学生時代の友達と同窓会でもしているような内容。「俺たち、昔はもっとギラギラしてたよな」と思い出を語っているような雰囲気です。働く男性が特にグッとくるのは2番の歌詞で、10代、20代、30代の生き様を、ストレートな言葉で歌い上げます。10代は「世の中なんかクソだ」ととがっていた、20代は毎日がうまくいかずにスレた心で街を彷徨った。30代で、愛すべき家庭を持ったのでしょう、その人ための命だ、と歌っています。これぞまさに、結婚をして子供を持ち丸くなった自分ではあるけれど、昔の気持ちを忘れずに頑張っていこう、という感動的な応援ソングなのです。

2番を聞いて「昔の俺だ」と思う人は多いようです。実際に街を彷徨った経験を持つ人もいたり、似たようなマインドは誰でも持っているでしょう。歌詞の奥深さは、絶対に10代、20代にはわからないでしょう。