いしだあゆみと和洋折衷の風

生涯で約3000もの曲を手掛けた作曲家・筒美京平は、音作りに徹した、いわばヒット曲職人です。とにかく売ることにひたすら主眼をおき、時代ごとの音楽潮流に前歯でバクバク噛みつき、奥歯で噛みしめ咀嚼して、日本人向けに加工する作業をやり続けました。

色付きのビニールは、コピースペースを持つ明るい背景にコレクションを記録します。
写真=iStock.com/Olga Niekrasova
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1960年代から始まる作曲人生の中で、『魅せられて』(ジュディ・オング)や『また逢う日まで』(尾崎紀世彦)などの歌謡曲から、アニメ『サザエさん』のテーマ曲や、auのCMソング『恋のダウンロード』(仲間由紀恵 with ダウンローズ)まで、「この曲も筒美京平なの?」と驚いてしまうような馴染みのある曲を多数作曲しています。

作曲家として初のオリコン1位を取った曲は、いしだあゆみの『ブルー・ライト・ヨコハマ』(1968年)。リアルタイムでビートルズが活躍していた時代です。

横浜を題材にした曲ですが、当時の横浜は、それはもうオシャレの最先端。東京よりも横浜がイケてる時代で、活気あふれる伊勢佐木町があり、米軍住宅もあるなど、日本中が憧れるハイカラな街でした。同じ年に青江三奈の『伊勢佐木町ブルース』(作曲は鈴木庸一)も流行しましたね。