嫌われず、揉めずに一言で萎えさせるべし

どんな職場にも、あたりのきつい人はいます。嫌味や悪口を言ってきたり、マウンティングをしてきたり、パワハラやセクハラまがいの言動を浴びせてくる人たちです。あなたはそんな相手に「言い返してやりたい」と思いますか? あるいはもう、そんな気すら起こらなくなっているかもしれません。

ビジネスウーマンをメガホンで叱責する上司
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こういう相手に、言われっぱなしでいるのはよくありません。そのときに感じるイライラやモヤモヤは、ストレスとして蓄積していきます。もっとよくないのは「言われる自分も悪いんだ」と思い込むことです。自責の念に駆られ、自分を追い詰めてしまう人もいます。そもそも、業務上の指摘なら、嫌味や悪口を含める必要はないのです。

相手とあなたのやり取りは、職場の同僚や後輩も見ています。あなたが「言い返さない人なんだ」と思われると、便乗する人が出てこないとも限りません。そこまでいかずとも、面倒ごとを押し付けられたり、何か問題が生じたときにスケープゴートにされてしまうかもしれません。

そうは言っても、なかなか言い返せないのは「その後のこと」を考えるからです。相手の怒りに火をつけて、攻撃がエスカレートする可能性もあります。上司や同僚とはこれからもずっと、職場で顔を合わせなければならないのです。

やっかいなことになるくらいなら、我慢するほうがましだ。自分が耐えさえすればいいのだから――。このように考えて堪えている人が、けっこう多いのではないでしょうか。でも、それではますます悪循環にはまってしまいます。

というのも、攻撃的な態度をとる人は、きつくあたっても言い返してこない相手、ひどいことを言われたと周囲に口外しない相手、落ち込んだ様子を見せる相手を狙ってそういうことをしてくるのです。あなたがよかれと思って耐えているとしたら、それは自らハラスメント悪魔たちのごちそうになる行為でしかありません。

本稿では、そうした相手に効果的に言い返す技術について、考えてみたいと思います。「言い返す」といっても、反撃に出て手痛いしっぺ返しを食らわせるのではありません。悪意に悪意で返したら、相手はさらに強い悪意で応戦してくるかもしれませんし、何よりあなたの清らかな心が汚れてしまいます。

私が提案したいのは、まず刺々しい言葉を無力化してしまうこと。合気道の達人が襲い掛かってきた敵をはらりとかわし、相手の力を利用してごろんと転がしてしまうイメージです。次に「こいつには何を言っても効かないんだ」と、攻撃する気力を萎えさせてしまうような一言を返して、相手の悪意に楔を打ちます。

嫌われたり、揉めることはありません。うまくやればこちらの味方につけることができますし、その人の悪意を浄化して更生させるきっかけをつくれるかもしれません。周囲からは「どうやってあのモンスターを手懐けたの⁉️」「あなたは誰に対してもフラットに対応する人だね」と一目置かれることになるでしょう。