志望校合格の裏に論理的なノウハウあり

私は東京、神奈川、大阪に約60教室を展開する「個別指導コノ塾」の経営者です。教育をテクノロジーでより良くしたいと受験アプリ「スタディサプリ」の開発に携わりましたが、5年ほどやって「デジタルだけでは限界もある」と感じるところがあり、リアル(教室)×デジタルの強みを掛け合わせたハイブリッドのスタイルに行きつきました。

当塾では全学力帯で9割の生徒が成績アップしています(※)。その理由は、出題傾向を分析し作成した教材をもとに、一人一人に合わせたカリキュラムを提供していることと、学習が継続する仕組みを取り入れているからです。

※中学校1~3年生の1学期末テストと2学期末テストの比較データ(2021年)

このノウハウはビジネスパーソンが取り組むあらゆる勉強(資格試験から生涯学習まで)に有効です。そこで本稿では、コノ塾で成果を上げているノウハウをベースとして、ビジネスパーソンの学びと効果的な勉強法について考えてみたいと思います。

ノートパソコンを使用し、メモを取る女性
写真=iStock.com/iBrave
※写真はイメージです

学習塾のノウハウといっても、奇をてらったものではありません。きわめて論理的で、聞いてしまえばあたりまえに思われるかもしれません。

小中学生には、志望校合格という社会人に比べるとわかりやすいゴールがあります。過去問もありますので「何をどれだけできるようになれば、ゴールに到達できるか」の基準も明確です。

そこでまず私たちは、生徒と話し合って目標を確認し、現在の自分の学力がどの位置にあるのかを把握します。そうすると、残り期間でどれだけ学力を引き上げれば到達できるかわかるので、差分を埋めるべく学習計画を立てます。

計画では中間・期末テストをスモールステップとして1.5〜2カ月で反復できるカリキュラムを設定し、こなしていきます。中学生にとって入試だけがゴールでは目標が遠すぎますし、保護者はそもそも学校の成績が気になっています。また高校入試は推薦入試のみならず、一般試験でも合否判定に内申点が一定割合使われます。以上の理由からも、中間・期末テスト対策が重要になります。

現在の学力(勉強のスタート地点)は生徒によって異なりますし、学力が伸びるペースにも個性があります。だからこそ、デジタルによる個別化と人による個別指導のハイブリッドが効果を発揮するのです。

また、日々勉強に取り組んでいると、あらゆるところに「つまずきポイント」が出てきます。それを人(講師や教室長)が伴走することでいかに回避し、1つずつ解消するかでペースが維持できます。学習の継続には、いかにモチベーションを保つかがミソなのです。

これらを踏まえて、ビジネスパーソンが勉強を継続し、成果を上げるスキームについて考えていきます。

1つ目のキーワードは「小分け」です。人間の意識は重要性が高くても遠いタスクには反応しにくく、目の前の短期的なタスクに向きやすい傾向があります。

来月のプレゼン資料作成に早くから取り掛かったほうがいいのはわかっているのに、時間があるとついスマホゲームに熱中してしまうのは、脳に仕込まれた「バグ」かもしれません。最終的に完成させる日付だけでなく「1週目はここまでやる、2週目はここまで進む……」という具合に途中経過の目標を設定して期間を小分けにすることで、取り掛かりやすくなります。