ゾゾ創業者・前澤友作氏は、2018年にバイオリンの名器「ストラディヴァリウス」を手に入れたと発表した。オークションでは1挺10億円超で取引される貴重なコレクションだが、同じ年に東京で開かれた「21挺のストラディヴァリウスを集める」という企画にもポンと貸し出した。企画を主催した中澤創太氏は「前澤さんのコレクションは金持ちの道楽ではない」という——。

※本稿は中澤創太『TOKYOストラディヴァリウス1800日戦記』(日経BP)の一部を再編集したものです。

前澤友作のアート収集は「金持ちの道楽」か

前澤友作さん、2018年当時はスタートトゥデイ(ZOZO)を率いる敏腕社長として名を轟かせ、公私にわたる様々な話題が尽きない、いわゆる「有名人」であった。

前澤 友作氏(2018年12月10日、LINE「NEWS AWARDS 2018」発表会=東京都港区にて
前澤 友作氏 2018年12月10日、LINE「NEWS AWARDS 2018」発表会=東京都港区にて(写真=時事通信フォト)

そんな前澤さんの存在を強く意識するようになったのは、ご自身で購入されたバスキアの絵を東京・代官山で公開された時だった。それは単なる「有名作品のお目見え」ではなく、まだ世に出ていない若手アーティストの作品を一緒に展示することで、来場者に興味を持ってもらおうという素晴らしい企画だった。

「クラシックを志した者のほとんどは食っていけない」。そんな厳しい現実を何とか変えたいと、僕も若手演奏家のミニコンサートなどに力を入れていたが、「アート」もまた同様に厳しい世界。前澤さんの取り組みに素直に共感していた。

アートの収集とは次世代にその文化遺産を継承するという重い責任を背負う。ともすれば金持ちの道楽のように見られがちだし、そうした人もいるだろう。しかし、若手に希望を与える展示会を開催する前澤さんは、その責任を自覚している人だと思った。

そして、そんな前澤さんなら、僕が長らく取り組んできた、才能豊かな音楽家のために楽器を貸し出す取り組みに共感してくれるのではないか。ストラディヴァリウスの価値を理解し、その生かし方を真剣に考えてくれるのではないか。

そんなことを妻に話したら、「それなら前澤さんに連絡してみたらいいじゃない?」と、こともなげに言う。なるほど、躊躇なんて僕らしくない。ここはSNSで直接アプローチしよう。不躾だけど、たくさん届くメッセージに紛れてしまうかもしれないけれど、とにかく動こう。