「冬」も「来春」も「任期満了」もない

もちろん安倍氏が4選を果たして任期満了の解散となることも否定できないが、今の安倍氏が党則を変更して4選を果たすという荒業を行うだけの求心力があるとは思いにくい。

そして、来年夏は1年延期された東京オリンピック・パラリンピックが開かれることになっている。予定通り開かれるか、それとも中止となるか、全く見通せない。そういう状況での解散は危険すぎる。

「冬」も「来春」も「任期満了」もない。そう考えると、先の自民党幹部の発言通り「消去法」で今秋の衆院選が浮上してくるのだ。

それでは、秋の選挙で自民党は勝つ見込みがあるのか。先に触れたように、内閣支持率は安倍氏は2012年末、首相に返り咲いて以来、最低レベルで推移している。その状態で自民党、公明党の獲得議席は減るのは避けられない。

しかし5日の東京都知事選は、自民党にとって衆院解散の誘惑にかられるデータがあった。都知事選は小池百合子氏が366万票以上を獲得して圧勝した。野党勢力は、2位の宇都宮健児氏を推した立憲民主、共産、社民、山本太郎氏が出馬したれいわ新選組、小野泰輔氏を推した日本維新の会に3分裂。野党勢力の1部は小池氏を支援していたから野党は4分裂していたという方が正確かもしれない。野党共闘が進まず、さらに都知事選で野党内の亀裂を深めてしまった。これは自民党にとっては好材料だ。

都議補選では全選挙区で自民党が野党を抑えて勝利

さらに具体的なデータがある。5日には都知事選と同日で4つの選挙区で都議補選が行われたが、すべての選挙区で自民党の候補が野党候補を抑えて勝利した。都議補選は衆院の小選挙区と同じ定数1。そこで全勝したことは自民党にとっては自信につながる。都議補選4連勝が、衆院解散論のアクセル役となるかもしれない。安倍首相は7日の自民党役員会で、都知事選と都議補選の結果に触れ「勝利は大きな励みとなる」と語っている。「励み」とは、何を意味するののか。

つまり、安倍政権および自民党の現状だけをみると、秋の衆院選は自殺行為に見えるが、今後の政治日程や野党の現状を「消去法」で「相対的」に見ると、くっきりと現実味を帯びてくるのだ。

永田町では早くも「9月末に解散、10月25日に投票」という具体的な日程が語られ始めている。年内に安倍氏の手で衆院解散する場合は安倍氏の総裁4選論も浮上するため、並行して自民党内で権力闘争が始まる可能性もある。そして、新型コロナウイルスの感染者数の推移も解散戦略の行方を見えにくくしている。

それでも、3カ月前には誰も取り合わなかった「今秋衆院選」は十分可能性が出てきた。そのことは疑う者は永田町にはいなくなった。

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