ここで解散すれば「野党を利するだけ」にも思えるが…
しかし、秋に衆院選を行うことで、自民党にとって何のメリットがあるのだろう。読売新聞社が3日から5日にかけて行った世論調査で安倍内閣の支持率は39%。不支持率が52%。報道各社の世論調査では、ここ数カ月、不支持が支持を上回る傾向が続いているが、その差はさらに広がっている。ここで解散すれば野党を利するだけではないか。
大義もない。言うまでもなく安倍内閣はコロナ対応が急務になっている。特に東京の感染拡大で「第2波」に現実味がでている。その中で、衆院解散で政治空白をつくれば批判を受けることは間違いない。秋に衆院を解散しようとすれば、秋に臨時国会を召集して、冒頭で解散することになる。6月17日に国会を延長せずに閉じ、秋も実質的な審議を行わないことになれば、国会軽視との批判も免れないだろう。
「理屈で言えば、常識的には秋の衆院選は、ない。しかし、消去法でいけば『秋』となるのだ」
自民党幹部の1人が耳打ちする。彼の理屈を聞いてみよう。
公明党は来年7月の「東京都議選」を非常に重視している
衆院の任期満了は来年10月。それまでに、必ず衆院選が行われる。そのタイミングは、①今秋(秋の臨時国会冒頭解散)、②年末から年明け(通常国会冒頭解散)、③来春から初夏の解散(2021年度予算成立後の解散)、④任期満了の解散――の4択となる。
「今秋」以外の選択肢をみてみよう。「年末から年明け」。冬の総選挙。政府・与党はこの選択肢を完全に消している。冬は新型コロナの第2波が押し寄せることが予想され、インフルエンザの流行もあいまって、医療崩壊の危機となる可能性がある。この時期に衆院解散を行うべきではないというのは衆目の一致するところなのだ。
次に「来春から初夏」。これには公明党が強く反対している。公明党は、7月に行われる東京都議選を非常に重視している。公明党は創価学会という巨大組織に支えられている。それを動かすには時間がかかる。だから都議選と衆院選の間には最低3カ月は期間を空けたい。だから「来春から初夏」には反対だ。連立のパートナーの意見を、自民党も無視はできないだろう。
そして「任期満了」。これはリスクが大きすぎる。過去の歴史をみても、任期満了もしくはそれに近い選挙は、政権与党が負けるパターンが多いのだ。そして何よりも重要なのは、任期満了前に安倍首相の自民党総裁任期が来る。安倍氏は、現段階では4選を目指す考えはないと強調している。と、いうことは任期満了の選挙は、新総裁(新首相)のもとで行われることになるが、もし敗北したら、新総裁は就任後、数十日で辞任するようなことになりかねない。そうすれば、政局は流動化してしまう。