いがみ合いの結果、政府の方針が歪んでいるように見える
安倍政権が行う新型コロナ対応の中で、旅行などへの需要喚起策「Go Toキャンペーン」は、最も評判の悪い施策となってしまったようだ。観光業界などの支援のためとはいえ、感染急拡大の中で、あえて国民を全国に拡散させる政策は、あまりにタイミングが悪い。
しかも問題は、政府と東京都のいがみ合いの結果、政府の方針が歪んでいるように国民に見えることだ。その裏には小池百合子東京都知事のしたたかな計算も働く。
菅義偉官房長官と小池百合子東京都知事のバトルは、すっかりおなじみになった。口火を切ったのは菅氏。7月11日、北海道千歳市での講演で「この問題は圧倒的に東京問題といっても過言ではない」と発言。これに対し、小池氏は13日、都庁で記者団に対し「Go Toキャンペーンは国として整合性をどうとっていくのか。むしろ国の問題だ」と反論。国と首都のバトルが表面化した。
22日にスタートした「Go To」トラベルの対象から東京都だけが除外されたことから「官邸が小池氏に対する意趣返しをした」という見方が、さらに広がった。感染者が日々、過去最多を更新する東京都を除外するという判断は、妥当ではある。ただし、神奈川や埼玉や大阪はOKで東京は除外という説明は、つきにくい。だから「意趣返し」という見方が消えない。
小池氏の感染者数発表を官邸は「嫌がらせ」と受け止め
一連の「菅・小池バトル」はどちらかというと菅氏の対応が「おとなげない」と映り、小池氏の方に同情が集まっているようだ。感染者の拡大も、全国に広がっており「東京問題」ではなくなっている。しかし、菅氏にも言い分はある。
7月20日前後、小池氏は午前中にマスコミの前で感染者数について語ることが多かった。しかも確定値ではなく、おおよその数を語る。これは、感染者がどんどん増えている実態を昼のニュースでアピールして「それでも『Go To』を強行するつもり?」と迫る意味合いがあると首相官邸側は受け止めている。東京都の感染者が多い時は、早めに報道される傾向があることに疑問を持っていた人がいたかもしれないが、こういうからくりもあるようだ。
政府のスポークスマンでもある菅氏は、小池氏の言動を完全な「嫌がらせ」とみている。だから「おとなげない」発言にもなる。