769億円で事務を受託した「協議会」の中身
「持続化給付金」の事務委託を巡って国民の不信感が高まっている。
持続化給付金は新型コロナウイルスの蔓延で業績が大幅に悪化した中小零細企業や個人事業者に対して最大200万円を給付するもの。5月1日から受付が始まったものの、申請から1カ月以上過ぎても1万件超が未払いになっているなど、支給の遅れが問題になっている。
そんな中で、経済産業省から769億円で事務を受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が、749億円で電通に再委託していたことが発覚、中抜きをする「トンネル組織」ではないかという疑惑が浮上した。
取材を受けた同協議会の笠原英一代表理事(その後、6月8日に辞任)はメディアの取材に対して、「この案件の執行権限がなく、細かいことは分からない。元電通社員の理事に委任している」と語っていた。代表理事に執行権限がないというのも不思議な話だが、「自分は看板にすぎない」と言っているに等しい。報酬も一切受け取っていなかったという。
つまり協議会は電通が作った事業の「受け皿組織」ということなのだろう。そうだとすると野党などが追及する「トンネル組織」だということになってしまう。
事務所を公開したものの、後日不在になっていた
批判を受けた協議会側は6月8日に記者会見を開いて組織として実態があると強調。翌日には本部事務所を報道陣に公開した。数日前に野党議員が本部を訪れた際には誰もおらず、インターホンも外されていたというが、当日は5人が出社していた。不在だったのは新型コロナに伴って自宅勤務をしていたからだと説明している。
事務所には8台の電話と、十数台のノートパソコンが置かれていたが、事務所はガランとしており、膨大な作業を行っている雰囲気ではなかったという。もともと職員は9人だというが、在宅勤務にもかかわらず、置かれたパソコンの台数が多いのが目についたと記者は話していた。広報担当の武藤靖人理事は「都内に複数の拠点があり、150人体制で支払い業務などを行っている」と説明していた。
野党は、協議会が手にした差額の20億円について実態がない「中抜き」ではないかと指摘しているが、政府は給付金の振込手数料など適正な支出だとしている。ちなみに後日、野党議員が事務所を訪ねたところ、やはり誰もいなかった、としている。