電通が外部に委託するのは「当たり前」のやり方
なぜ、電通ではなく、協議会が受託者となったのか。会見でも明確な答えはなかった。電通出身の業務執行理事である平川健司氏は「協議会はサービス産業の業務プロセス改善の指導、活動、後援を続けてきた実態がある」とし、設立の趣旨に合致する中小企業や個人事業主支援を行うべきだと考えて「幹事社として前に出た」と答えた。
また、同席した電通の榑谷典洋副社長は、「これまでの同種の事業の経験の中でグループ会社を集めることが一番良い形でサービスを提供できると判断しました」と述べ、電通が再受託したものを電通グループの子会社などに再委託した理由を説明した。再受託した「電通ライブ」や「電通テック」といった電通子会社は、さらにパソナや大日本印刷、トランスコスモスといった会社に業務を外注している。
電通が受注したものを子会社や外部に委託するのは電通にとっては「当たり前」のやり方だ。通常の民間企業からの仕事でも、電通自身が手足を動かして作業することは希で、実働は子会社や外部委託先が行う。電通はコーディネート料として最低でも15%程度を取るという。
今回、会見で榑谷副社長が、今回の業務は「低い利益率だ」と強調していた。電通の「一般管理費率は10%を超えている」ので、今回、国から受託した事業の管理費10%は低い、というわけだ。
協議会の設立自体が「経産省主導」という疑惑
通常ならば電通が表に出るのが普通だが、協議会を前面に出したのには、理由があったのは間違いない。新人社員の過労死事件などで厚生労働省から処分されるなど社会的イメージが悪い中で、給付金の支払い機関名に名前が出るのを憚った、というのもあっただろう。だが、もっとも疑われているのが経済産業省の「利権」作りだ。
業界団体を作らせそこに補助金や助成金を出したり、業務を発注するのは霞が関の伝統的なやり方だ。競争入札で受注させれば、相手は「民間」なので、普通ならば事業について国会などで追及されることはない。事業を実施する手足を持たない霞が関からすれば、業界団体は格好のツールになる。もちろん、その団体や組織に資金が貯まれば、天下りして高給を払わせるわけだ。
今回、協議会の定款の文書のプロパティーの作成者が「情報システム厚生課」になっていたと野党議員が明らかにしている。また、この問題を最初に報じた週刊文春には協議会の設立時の代表理事を務めた赤池学・ユニバーサルデザイン総合研究所所長のコメントが掲載されているが、そこでは、「経産省の方から立ち上げの直前に代表理事を受けてもらえないかという話があって、それで受けた」と語っている。
経産省が進めていた「おもてなし規格認証」を運営する団体として作られたもので、つまり、協議会自体の設立が経産省主導だったということが見え隠れしている。
さらに協議会は法律で定められた「決算公告」を出していない。にもかかわらず、設立以来、経産省の事業を受託してきたのは、役所の意向が大きく働いてきたのではないか、と見られている。現在、経産省で中小企業庁長官を務める前田泰宏氏が協議会の理事を務める電通関係者と懇意であることも判明している。まさに協議会は“官民連携”の象徴的な存在になっているわけだ。