新型コロナウイルスによる景気悪化で、多くの人々が苦境に立たされている。日本経営合理化協会理事長の牟田太陽氏は「非常時にこそ、野村克也さんが大切にしていた『弱者の流儀』がためになる」という。どういうことか——。
<シダックス祝勝会>祝勝会で野村沙知代夫人(左)と笑顔で乾杯するシダックス・野村克也監督=2003年06月24日、日本青年館
写真=スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト
<シダックス祝勝会>祝勝会で野村沙知代夫人(左)と笑顔で乾杯するシダックス・野村克也監督=2003年06月24日、日本青年館

講演が終わっても帰ろうとしない野村氏

「今日、家に帰りたくない」

新型コロナウイルスの影響が少し気になり始めた今年2月11日。私たちは朝から野村克也さんの訃報を知らされて無念の溜息をもらしました。私どもの日本経営合理化協会においてもつながりが深く、野村さんに講演していただいたことがありました。また、2017(平成28)年に亡くなられた野村沙知代夫人にも講演していただいたことがありました。

野村さんには、忘れられないエピソードがあります。パレスホテルで講演された野村さんですが、壇上に上がってこのように話されました。

「今日、沙知代とケンカをしてきたんだ。だから、家に帰りたくない」

出席されていた経営者の方たちはみな笑っていました。講演を終えて降壇され、控室に帰られたのですが、そこから待てど暮らせど全然帰ろうとしませんでした。控室を占領されていました。本当にケンカをされたようです。その後、どうなったかと言いますと、3時間後、沙知代夫人が迎えに現れて、二人で控室を後にされました。