会社経営にはリスクがつきものだ。一度経営が傾けば、あっという間に追い込まれてしまう。ピーク時には8店舗のガソリンスタンドを経営し、3年間で18億円の売上があったという元経営者の葛西憲司さん(55歳・仮名)は、「負債総額が約2億円になってようやく破綻処理を決意したが、もう遅かった」という――。

※本稿は増田明利『今日、借金を背負った』(彩図社)の一部を再編集したものです。

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「認知症にでもならない限り記憶から消えることはない」

葛西憲司さん(55歳・仮名)

出身地/埼玉県 現住所/東京都練馬区
職業/物流会社契約社員 月収/20万円 妻の月収/17万円 家賃/5万4000円
主な借金/銀行、信用金庫、信用組合で1億7000万円 事業者ローン500万円
買掛金、リース代、公租公課未払いを合わせると約2億円
他に親族より180万円
借金の残高/自己破産・免責で消滅。親族からの支援金のみ
月々の返済額/妹、義兄に4万円

「もう2年近くも前のことなんですが、今でも当時のことは時系列で覚えています。老人になって認知症にでもならない限り記憶から消えることはないでしょうね」

こう話す葛西さんは約2年前に経営していた会社を倒産させてしまったという過去を持つ。今は身辺整理も終わり落ち着きを取り戻しているが、際限なく借入れ金が膨らんでいき、倒産に向かって坂道を転げ落ちていく当時の出来事は詳細に、そして鮮明に覚えている。

「本当に毎日が苦痛でした。資金繰りに追われ気が休まるときがなかった。手形や小切手が落ちない夢を見て飛び起きたりしましたからね。まさに生き地獄だった」

葛西さんが社長として経営していたのは燃料販売会社。埼玉県の幹線道路沿いで数店舗のガソリンスタンドを展開していた。