集団の掟を破ることを心配し、思考がフリーズする

似たもの同士コミュニティが人々にもたらすのは、組織の中で「集団の掟から外れた者認定をされたくない」という渇望である。似たもの同士コミュニティでは他人に迷惑を掛けることを恐れる。互恵が集団の絶対的なルールだからである。

人手不足の中で休むことは、その分をやる人が必要で他人に負荷がかかる。高熱が出ていて誰が見ても理由がたつような状態ならばともかく、体調不良程度で休むことはずる休みと思われないか。大義名分なく休んだことで誰かに負担がかかると、互恵のルールを壊した、つまり「集団のおきてから外れた者認定」をされることへの不安感から無理をして出社する。

一方で、一人で抜け駆けして皆と違う行動をとると組織からの長期的な援助と、仲間からの互恵にあずかることができないという不安も持つ。集団の掟を破ることについての危惧が何重にも積み重なり、自分で判断することができない思考がフリーズした状態になる。外れ者認定されたくないがゆえに、国や企業トップからの強制的な指示をひたすら待つ。

自分で決めたならば集団の中の異常行動だけれども、上からの指示だったらそれを守るのは正常行動だからである。体調が悪くて欠勤して後で不合理な扱いを受けたくないとの思いが無理にでも出勤する意思決定となる。時間だけが過ぎていき、ウイルスが蔓延まんえんしていく。

サラリーマンを襲う「組織分離不安」

似たもの同士コミュニティは人々に組織分離不安をもたらす。組織に長くいると、組織から物理的に離れることに対して心理的不安を覚えやすい。母子分離不安ならぬ、組織分離不安である。

ここで言う不安の要因には2つの側面がある。まず、同じ環境から異質な者がたくさんいる環境に出ていく不安である。次に、組織から離れることで目前の仕事が達成できなくなるという不安である。これらの不安は組織に対する好悪の情とは別に発生する。会社が嫌いだと思っていたとしても、仕事に対して忠実でありたいと思えば組織分離不安は発生する。

さらに言えば、良くも悪くもわが国の場合、長時間労働が初期設定となっている。個人の持つ人的なネットワークは所属している企業を中心に張り巡らされていることが多く、会社に行かないとそれらとアクセスするのがむずかしい。情報の取得という側面からも、少しの体調不良であれば休むよりも組織にいる方が情報にアクセスすることができて合理的という判断につながる。