「迷惑をかけるから」体調不良でも出社する人が圧倒的

一方で、出社しなくても仕事にさほどの影響がない人々も多く居ることは事実である。多数派であろうこの種の人々が、体調不良で休むという断固たる意思決定と行動ができないのはなぜだろうか。

筆者の勤務するビジネススクールのMBA学生達とのディスカッションでは、その理由として「周りに迷惑をかけるから」と答える者が大半であった。自分が抜けることによって、職場の中の誰かがしわ寄せを受ける。ただでさえ人手不足で大変なのに同僚に迷惑をかけたくない、というのがその趣旨である。

責任感のある人ほど自分の体調を鑑みずに仕事に対して忠実に動く。その結果として体調不全の中の出社が起きる。ウイルスの感染を広げているのは、こうした日本人の「出社至上主義」にあるのだ。

「わが社に合う」人々を採用し続けた結果

なぜ具合が悪いのに出社してしまうのか。組織行動学者の視点からみると、「似たもの同士コミュニティ」の行動特性が存分に発揮された結果だと理解できる。同じような教育、同じような考え方、同じような経験を持った人々を日本企業は長い時間をかけて集めて組織化してきた。「わが社に合うかどうか」は長い間、採用の最も大きな基準だった。「わが社に合う」似たような人々を採用し続けた結果、日本企業は同質性の高い「似たもの同士コミュニティ」となった。

昨今では人口減少のあおりをうけて、女性も多く採用するようになり徐々に変化はみられるが、このコミュニティのメインプレーヤーは男性で(注1:正社員比率で言うと男女は産業別平均で65:35の割合) 意志決定は圧倒的におじさんが中心として担ってきた。

人は自分と同じ要素のある人間を本能的に好む。ダイバーシティの重要性を声高に企業は叫べども、結果的にはある一定の幅の中での採用である。飛び抜けて異質な人を積極的に採用することはまれである。似たような経歴、似たところのある人々が企業に集い、組織が形成されている。この種の似たもの同士コミュニティは一緒に居るとメンバー間の心理的な安心度が高い。似たもの同士はお互いを察しやすいし、そもそも似たようなマインドセットを持つ。

注1:高田朝子『女性マネージャーの働き方改革2.0』(生産性出版)