新型コロナウイルスをめぐり、政府は時差出勤やテレワークの積極的な実施を求めている。しかし、政府の呼びかけは機能するのだろうか。法政大学ビジネススクールの高田朝子教授は「テレワークに対応しているのは大企業が中心。『出社至上主義』の中小企業では、有休での対応になりかねない」と指摘する——。
新型肺炎の感染防止のためにマスクを着けて飛行機の搭乗を待つ客たち=2月17日、東京・羽田空港
写真=時事通信フォト
新型肺炎の感染防止のためにマスクを着けて飛行機の搭乗を待つ客たち=2月17日、東京・羽田空港

政府は時差通勤、テレワークの活用を求めるが…

COVID-19感染症、いわゆる新型コロナウイルスが勢いを増している。国内での感染者と死亡者の発生と増加を受けて、「対岸の火事」から「渦中の当事者」にモードが完全に切り替わった。

政府は感染防止のために発熱などの症状があったときに労働者が休みやすい環境の整備や、時差通勤、テレワークの積極的な活用を強く求めている。そして大企業を中心に、時差出勤やリモートワークに切り変える企業がでてきはじめた。ただし、この流れが長期的かつ完全に実施されるかというと不透明である。

東京の満員電車は少し減った感はあるけれども、相変わらずの混雑で、多くの人が通常通り出勤する。都会においては公共交通機関を使わずに出勤することは極めて難しいし、高熱が出ているわけではない体調不良で会社を休むという意思決定はなかなかハードルが高い。

言うまでもなく人混みを避けることと、体調不良時は自宅から外に出ないことの2つは感染拡大防止の大原則である。しかし、感染者となった人の多くは、症状が顕在化して入院措置がとられるまで、真面目に会社に行き、仕事をし、そして意図せず周囲のウイルス感染のリスクを引き上げた。誰もウイルスをばらまこうなどとは微塵みじんも思っておらず、その時に求められていた仕事をこなした結果である。

この種の休めない人々を単純に社畜とののしるのはたやすい。しかし、世の中には自分が職場に移動しないと仕事にならない人々も多く存在する。製造の現場では現場に行かないと仕事にならないだろうし、医療や介護、そして他のサービス業も又しかりである。それ以外でも、会社に行って社内ネットワークに接続し、会社のパソコンを使わないと仕事ができないという人々も多いだろう。

その上、アルバイトやパート、そして多くの派遣社員や契約社員の非正規社員や、フリーランサー等、仕事に行くことが賃金に直結している人々は休みたくても休めない。生活ができなくなるからである。