生後57日から預けられる事業所内保育施設

さらに社員のキャリア継続や復職支援をサポートする象徴的施設が03年に開設した事業所内保育施設「カンガルーム汐留」である。生後57日の乳児から小学校就学前の幼児を午前8時から午後7時(延長保育は午後8時)まで預かる。施設の面積は242平方メートルと広く、保育室、乳児室、調理室、幼児仕様のトイレ・シャワー室が完備されている。実際に内部を拝見したが、年齢ごとにクラス分けした保育を行うとともに、子供の様子を外部の家族がパソコン上で見ることができるインターネットカメラも設置されていた。

定員は34人であるが、定員枠の一部を近隣の他企業にも開放している。現在、同社の社員の子弟22人のほか、電通、ニチレイ、日本IBMなどの子弟10人の計32人の子供が入所する。園長は公募で選ばれた同社人事部ダイバーシティ推進グループの安藤哲男氏である。施設の意義について安藤氏は「復職希望の社員が安心してスムーズに復職できる機能としてカンガルームの存在は大きい」と指摘する。

「通常の保育所は3月の抽選を待って4月に入所するが、社員の中には9月、10月に復職したいという人もいる。他の保育所に入れない人でもここに預けて復職できる。しかも会社の近くであり、迎えに行く時間がかからない分、仕事にも集中できる。仕事を続けたい、育児もきちんとやりたいという社員をサポートするのが私たちの役割だと考えている」(安藤氏)

実際に復職後の利用者が圧倒的に多いという。また、同社では3歳までの育児休職を認めているが、最近は早く復職したいという女性が多く、0~1歳児から預かるケースが増えている。育児をやりながらキャリアも継続したいという志向が強まっている。

充実した施策を反映し、同社の女性の育児休業取得率は100%。育児休暇取得者は835人、1日の勤務時間を短縮できる育児時間取得者は935人(09年4月1日現在)とその数も半端ではない。また出産を機に退職する人は数えるほどしかいないという。