76期連続で増収記録を更新するジョンソン・エンド・ジョンソン、女性社員の登用に早くから取り組んできた資生堂。日米を代表する両社のダイバーシティはどこまで進んでいるのだろうか。
社員構成を市場の人口構成に近づけていく
ダイバーシティ(多様性)がにわかに注目され、女性や外国人を積極的に採用する企業が増えている。ダイバーシティは英語のDiversity&Inclusionを省略したもので、本来は人種、性別、年齢などの外見上の違いや宗教、価値観などの内面的な違いを受容することを意味する。さらに企業戦略的には、そうした多様な個性が十分に能力を発揮できる職場環境を醸成することで、それこそ多様な「個」で構成される市場のニーズに合致する商品・サービスを生み出し、ビジネスの成長を図ることに最終的な狙いがある。
だが、言うは易く行うは難しである。様々な人種や宗教が混在する米国では、政府の方針で採用が義務付けられていることに加えて、逆に企業としても多様な人材を受容し、活用することがビジネスにも直結しやすい。これに対して日本企業では長らく「日本人」「男性」「大卒総合職」「年功」といった同質的価値観を重視した組織運営を続けてきた。そこに「外国人」「女性」「学歴不問」「成果」という価値観を導入することは容易ではなく、まさに企業文化の変容を意味する。
しかも外国人や女性を数多く採用すればいいという問題でもない。個性を尊重し、能力を最大限に引き出すには働きやすい環境の整備が不可欠であるが、入社後数年で女性社員が大量に辞めていく企業も少なくない。さらに今日の不況下では、「受容」を支える育児休職などのワーク・ライフ・バランス施策が負担となり、社員を切り捨てる悪質な企業も発生している。
しかし、ダイバーシティマネジメントを抜きにして日本企業が生き残ることは難しいだろう。グローバル市場は多様性の塊であり、国内市場も「個」に着目したイノベーションなしには需要の開拓はありえないし、そうである以上、必然的に組織における「個」の多様化が求められる。