女性管理職率を上げると企業価値の向上につながる

日本企業におけるダイバーシティの主流のテーマは現在のところ女性であるが、その代表的な企業の一つが資生堂だ。いうまでもなく顧客の9割を女性が占める。顧客を見据えたダイバーシティ戦略の推進が生産性向上につながるとの認識がある。

「女性営業職だけではなく、店頭の美容職も日々女性の顧客と接している。お客様は若い人から育児をしている人まで様々であり、子供の世話に手間がかかり、短時間でお化粧をしたいという人に、育児経験のある美容職がアドバイスすると共感や信頼関係が生まれる。そのことが当社の価値向上にもつながっている」(宮原淳二・人事部ダイバーシティ推進グループ参事)

同社のダイバーシティ戦略を紹介する前にこれまでに築き上げた実績を示そう。同社グループの国内従業員約2万6000人(うち店頭美容職が1万人)中8割を女性が占める。大卒女性採用数は全体の約6割。いわゆるライン管理職に相当する女性リーダーの比率は06年4月に13.2%、現在は18.7%に達する。これは日本の大手企業の中では非常に高い水準であるが、同社は13年には30%に引き上げる目標を掲げている。

また、女性社員の定着率も見逃せない。大卒社員の入社後の3年以内の離職率は1%以下。資生堂単体の平均勤続年数は男性18.4年に対し、女性は17.5年とほぼ同等である。こうした実績を支えているのが、入社後のワーク・ライフ・バランス施策や教育プログラムなどのキャリア育成への取り組みだ。

同社のワーク・ライフ・バランス施策は、育児・介護休業法制定以前から始められており、法制定以後も常に法定を上回る制度の充実を図ってきた。

たとえば独自の取り組みとしては、妊娠から育児休業を経て職場復帰するまでの一連の流れを上司と確認し合う「チャイルドケアプラン」と呼ぶコミュニケーション体制もその一つだ。また、育児休業中に自宅のインターネットを通じて英語などの各種スキルを習得できるシステムの提供、妊娠・育児休職中の社員同士が情報交換する場を提供する社内SNSの開発など復職や仕事を継続するための細やかな配慮も実施している。