2012年、ロンドン五輪でのメダル獲得を目指すバレーボール全日本女子。世界と戦えるチームづくりのために、眞鍋政義新監督が取り入れた個々の能力とやる気を最大限引き出し、組織全体をパワーアップさせる指導法とは。
「公平性」と「明確さ」「透明性」がチームを元気にする
ビジネスに例えれば、日本をリードする名門企業の新社長に就任したようなものか。期待も注目も重圧もけた外れのおおきさである。
2009年8月某日。そんなことを言えば、バレーボール全日本女子の新監督、眞鍋政義は少しだけ笑みをうかべた。
「注目されるのは、当然、いいことだと思います。選手もやりがいがあるでしょう。テレビでも試合をどんどん放映してくれる。スタッフも選手もプレッシャーはありますけど、勝ったときの喜びが2倍、3倍になるのです」
眞鍋は45歳。新日鉄のエースセッターとしてプレーし、全日本男子でも活躍した。イタリアのプロチームに移籍した後、松下電器、旭化成で精緻なトスを上げつづける。現役を引退したのは41歳だった。
女子バレーの久光製薬の監督を経て、ことし、全日本女子の監督を引き継いだ。全日本女子は柳本晶一前監督の下、2004年アテネ五輪で5位、08年北京五輪でも5位に終わった。
柳本前監督はチームをオープンにし、テレビを軸としたメディアと一緒にファンを巻き込んだ。練習中でもテレビカメラの撮影を笑顔で歓迎した。
「女子バレーはずっと、閉鎖的だったんです。それを柳本さんは開放され、人気がバーッと上がってきたんです。わたしもその人気を維持し、いや、それ以上のものにしていきたい。公開練習もやっていきたいと考えています」
遡って、5月某日。新生全日本の初めてのミーティングの日、眞鍋監督はまず、目標を宣言した。「2012年ロンドン五輪のメダル獲得」と。
「その目標に向かって、みんなでイチからスタートです。次の五輪でメダルをとるためには、年齢なんて関係ない。40歳だろうが、15歳だろうが、いいものから使う。だから“練習中はスタッフにアピールせえ”と言いました」