ワンマン指導は古い。コーチ分業制で効率化を図る
体育館には2台のビデオカメラがセットされている。この映像をアナリストが分析、編集している。
「選手はこの数字を見て、何が悪かったのかを知り、昨日の分を反省したり、次の練習に生かしたりするのです。悪い部分は担当のコーチに聞いて、反復練習で直せばいいんです」
そう言う眞鍋ジャパンの最大の特徴は担当コーチ制、つまりは「分業制」の指導体制である。「おれについてこい」という強烈なリーダーシップによるワンマン指導とちがい、「ディフェンス」「ブロック」「戦術・戦略」「オフェンス」と分業指導制を敷き、それぞれ担当コーチを置いて指導を任せるのだ。全日本女子バレーの歴史では画期的なことである。
「これが世界の潮流です。選手もだれに聞けばいいのかわかりやすいし、コーチだってやりがいがでるでしょう。もしレシーブが悪かったら、選手はディフェンスコーチのところにいけばいい。ブロックの数字が悪かったら、ぼくはブロック担当コーチになんとかしてくれと言えばいい。それぞれのコーチがしっかり責任をとれよ、ということです。もちろん最後は全部、ぼくの責任になるのですが」
コーチといえば、今回、31歳セッターの竹下佳江・前主将がコーチ兼任となった。本人は当初、拒んだが、眞鍋監督が説得した。新日鉄時代、コーチ兼任で視野が広くなった経験を伝え、「ちがう世界をつくれるから」と。
「竹下は長年セッターをやっているから、いわばオフェンスコーチみたいなもんです。コーチにすべて任すのは勇気がいるけど、そこまでしないと世界には勝てません」
7月某日、練習をのぞけば、雰囲気が随分、変わった。柳本ジャパンのようなピリピリ感はない。これぞ眞鍋流か。とてもソフトな空気が漂っている。
眞鍋監督は練習で選手を精神的に追い詰めることはない。選手たちの意見をよく聞き、「風通し」をよくすることにつとめている。
温厚な風貌、いかにもこの人は冷酷になれなそうだ。
「監督が右イケ右、左イケ左という時代は終わったと思います。それでは世界で勝てない。最終的に何のスポーツもやるのは選手ですよ、選手」