逼迫した経営状況下にあっては、コストカットを余儀なくされる人件費。昇給なし、賞与ゼロでも、優秀な若手・中堅社員の忠心を得るために、上司が与えるべき、4つの“心のインセンティブ”とは何か。
景気が後退し売り上げや利益が落ちると、経営にとって人件費の負担が重くのしかかる。人件費は、コスト全体に占める割合が大きく、経営が逼迫すると実にやっかいなものになる。
人件費が負担なら削ればよいのだが、その方法は、一部特定の人の給与を減らすか、一部特定の人に辞めてもらうか、全員の給与を一律に減らすかしかない。しかし、このどれにも「法律」の壁が立ちはだかり、そう簡単には実施できるものではない。では一体、企業はどのようにしてこの人件費による経営利益の圧迫という問題に対応するのだろうか。
それは、減らせないならこれ以上増えないようにする、という方法しかない。具体的には「昇給率を一律にダウンさせる」「昇給者や昇格者を極端に減らす」などのアクションだ。しかし、このような施策がとられた場合に、最も割を食うのは、少ない給料で大きな貢献をしている若手から中堅社員である。とくに景気の後退がなければ確実に昇格や昇進を果たしたであろう優秀な社員は、納得がいかない。モチベーションダウンは必至で、組織にとっても大きなマイナスになる。下手をすれば、この環境でも成長している会社に転職することも考えられるし、可能性を模索する社員も少なくないはずだ。
そこで本稿では、このようなない袖は振れないという環境のなかでも、優秀な若手や中堅を筆頭に、多くの社員景気が後退し売り上げや利益が落ちると、経営にとって人件費の負担が重くのしかかる。人件費は、コスト全体に占める割合が大きく、経営が逼迫すると実にやっかいなものになる。
組織に属する人間は、ひとつの重要な資源であり資産であるが、単なるシステム部品ではない。感情を持つ生身の人間であり、働く意味や組織のなかでの自身の存在意義を常に問い続けている生き物である。
お金も働くうえで非常に重要ではあるが、それ以外にも、仕事の面白さ、仲間との良好な人間関係、権力や地位など、さまざまなものへの欲求を持っている。お金が出せない現実のなかでは、「不景気が諸悪の根源だ」と嘆いていても始まらない。他の欲求に応えることに時間と労力を使ったほうが賢明である。ここではこのような欲求に応える行為を、「インセンティブ(達成意欲を高める源泉)を与える」と呼ぶことにする。