輸入車販売でNo.1のシェアを誇るヤナセは、新人をどのようにして一流営業に育て上げ、そしてチーム力をつけているのか。強さの源泉になっている人事制度、人材育成の取り組みについて聞いた。

強さの秘密は体育会系人材の行動力と結束力

未曾有の不況下で企業が求める人材とは何か。最近、人事担当者の口から共通して出るキーワードは「打たれ強くストレス耐性がある」「最後までやり抜く実行力」の2つである。

たとえば大手不動産販売会社の人事課長は「今のような時代では、真面目すぎる人、考えすぎる人はだめだ。営業でも誰もが実績を上げるのが難しいときに、よし俺が契約をとってくるぞと、率先して行動するような、へこたれないタイプが欲しい」と指摘する。

不況以前は、営業マンに不可欠な能力として企画力や問題解決型提案営業力が盛んに吹聴されたが、この逆風下ではむしろガッツやバイタリティといった体育会系人材の資質が再評価されつつあるようだ。

しかし、1915年の創業以来、決してぶれることなく一貫してその資質を重視し続けてきた企業がある。輸入車販売最大手のヤナセである。同社の磯肥(いそこえる)・取締役人事部長は「体育会系人材の魅力は、考えるよりまず行動力が先にあり、少々のことではめげないこと、もう一つはいざというときの結束力が生み出す強さ。これは昔からのヤナセの社風に近い」と率直に評価する。

世界同時不況による壊滅的不振、国内市場の成熟化、個人消費の低迷といった最悪の環境下にある自動車産業。にもかかわらず、いまだに「飛び込み型訪問営業」を堅持し、数千万円の高級車を売り続けるヤナセの底力の源泉も体育会系的美質に象徴される団結力にあると言い切る。

「社長のリーダーシップに即順応し、一致団結、一丸となり、組織を尊重し立ち向かうバイタリティのある集団がヤナセの組織・力です。そしていざというときに火事場の馬鹿力的にものすごい力を発揮する個人と組織の信頼関係の強さにあります」(磯人事部長)