時々刻々と変わる状況下において、常に揺らがない「心」を保つ智慧を禅の教えに請う。「二元論的思考」から脱却すれば、どんな時代でもゆうゆうと生きていけるのだ。

同じ環境でも満ち足りる人と不満な人がいる

サブプライム問題に端を発する経済危機が叫ばれ始めてから1年半ほどが過ぎました。この間、リストラ、減少する年収、不安定な生活に不安を感じるビジネスマンが増えていることと思います。わたしたちは、なぜ、こんなに、お金が少なくなることに心を惑わされてしまうのでしょうか。お金の価値と働きがい、仕事のやりがいについて、どんなふうに考えたらよいのでしょうか。お金の価値を感じるのも、仕事のやりがいを感じるのも、「心=ココロ」です。心という存在は、「ココロ、コロコロ」のように実体のないもので、科学的に「心とはこれである」と解明されているものではありません。

「勝った・負けた」「得した・損した」といって一喜一憂するのも心、そのあらわれ方は百人百様です。同じような環境にあっても満ち足りた気分になる人もいれば、おおいに不満を覚える人もいます。お城のような邸宅で暮らし、毎日ご馳走三昧でも幸福感がやってこない人もいれば、極貧生活の中にも楽しみを見出し、麦飯と味噌汁だけの質素な食事をしみじみ味わえる人もいます。そう考えると、豊かな不満社会に生きる現代の日本人は、環境にかかわらず概して不満傾向にあるといえるのではないでしょうか。