簡潔かつ平易に説明

経営学の大量の情報が、徹底的にシンプルなフレームワーク〈思考の枠組み〉――ビジネスの4要素と、そのかけあわせ――によって、簡潔かつ平易に説明されていく。

三谷宏治『新しい経営学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「これまで経営学用語が組織の共通言語になれなかったのは、そのフレームワークが複雑だったり多すぎたりしたから。それでは1人が頑張って習得しても、人には伝えられず、共通言語になりません。またフレームワークが多いと学びが浅くなり、曲解や誤用が頻発します。たとえばSWOT分析は、ただものごとを整理するための枠組みなのに、そこから答えを導き出してしまう、といった具合です」

本書で用いられるフレームワークの4要素は、〈ターゲット/バリュー/ケイパビリティ/収益モデル〉だ。

「日本人は、フレームワークにあまり価値をおかず、ただの概念論くらいに考えがち。経営者が現場のナマの声にこだわるのはいいことですが、同時にトップがまず示すべきは論理的な大きな道筋です。日本企業がボトムアップの対処療法に陥りがちな背景には、共通言語としての経営フレームワークの不在や誤解があるように思います」

本書はこれから経営学を学ぶ学生や新人ビジネスパーソンのみならず、MBAの勉強はしたけれども身になっていないと悩む人や実践派の経営者たちにも、経営学の見取り図とそこでの必修項目を示してくれる。

三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授。BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして勤務した後、2006年から教育の世界に転じた。
(撮影=研壁秀俊)
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