日本には謙遜の文化がある。わが子を「バカ息子」と言うのもその一つだ。だが、開成中学校・高等学校の柳沢幸雄校長は「子どもの世界と大人の世界は違う。謙遜を理解できる年齢になるまでは、子供に聞かれてはいけない。けなされていると思い、傷ついてしまう」という――。

※本稿は、柳沢幸雄『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

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比較するなら「過去の子ども自身」

子育てにおいて、比較することはいけないと言われがちですが、それは比較の仕方が間違っているからです。たいていの場合、私たちは子どもを、兄弟、友達、過去の自分などと比べてしまうものです。このような比較が、お子さんにとってプラスになることはありません。

私は親御さんには、「子どもは垂直に比較してください」とお伝えしています。これは、その子自身の3日前、1カ月前、3カ月前、半年前、1年前と比較するやり方です。過去の状態と比較して、よくなった部分を具体的に褒めていきます。つまり比較対象は、常に過去のお子さん自身というわけです。

人間は千差万別ですから、成長の早さには凹凸があります。ある部分が早く成長しても、ある部分は遅いということは、普通にあるものです。幼い頃を振り返っても、立ち上がるのは早かったけど言葉は遅かった、文字を書くのは早かったけど計算は苦手だった、など違いがあったはずです。