※本稿は、齋藤隆次『ビジネスエリートが実践している 異文化理解の全テクニック』(KADOKAWA)の一部を加筆・再編集したものです。
日常会話ではよく使われるが……
皆さんご存じ、人気テレビ番組『開運! なんでも鑑定団』の中で、古美術鑑定家の中島誠之助さんは「いい仕事してますねぇ!」という決めゼリフを最上級のほめ言葉としています。では、この「いい仕事してますねぇ!」を英語で何と言うでしょうか。
この記事をお読みいただいている多くの方々は、おそらく“Good Job!”と答えるのではないかと思います。
たしかに、英語の直訳としては間違いではありませんし、アメリカでは子どもの教育における必須フレーズとしても頻繁に使われています。でも、この“Good Job!”という言葉、大人が子どもに対して使ったり、日常会話で軽く口にしたりする分にはいいのですが、大人同士が使う場合やビジネス上で使う場合、あるいは目上の人に対して使う場合は、決してほめ言葉にはなりません。
じつは、“Good Job!”を日本語の感覚をもとに表すと、「お疲れさま」「まあまあだね」「よくやったね」といったような、あくまで「軽い言葉」になるからです。
もちろん、ポジティブ・フィードバック(長所をさらに伸ばす考え方)の教育を受けてきたアメリカ人に対して、「ほめない」アプローチは論外でしょう。けれども、仕事におけるほめ言葉として“Good Job!”を使うのはそぐわない場合が多いのです。
たとえば、アメリカ人の部下が大きなプロジェクトを成し遂げたときなどに“Good Job!”という言葉を使うのは適切ではありません。「達成感があって、評価に値する素晴らしい仕事をしたはず」と本人が思っているのに、上司としての言葉が「まあまあだね」ぐらいにもとれる“Good Job!”ではあまりにも軽すぎて、その部下の気持ちに違和感が生じるのです。