韓国の中年男性は職場でも家庭でも崖っぷちに立たされている。ジャーナリストの金敬哲氏は「中年男性は迫りくるリストラの恐怖と背中合わせだ。韓国社会は人の目を過剰に意識する『体面文化』があるため、美容整形をしてでも外見を保ち、競争に生き残ろうとしている」という――。

※本稿は、金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

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「犬」と侮辱される韓国の中年男性たち

中小企業で次長を務めるファン・ソンミンさん(47歳)は、自分を典型的な中年とは思っていなかった。しかし、ある日、女性社員たちが、こっそり自分のことを「ゲジョシ」と呼んでいるのを聞いて愕然がくぜんとしてしまった。

金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』(講談社現代新書)

「ゲジョシ」とは、犬(ゲ)とおじさん(アジョシ)の合成語で、「品の悪い中年男性」に対して、若い世代が軽蔑を込めて使う流行語だ。ファンさんは、自分がなぜ「ゲジョシ」と呼ばれるのか理解できなかった。

失礼だという思いが頭の中を過ったが、だからといって彼女たちを呼んで問いただすわけにもいかない。ファンさんはすぐにインターネットで検索し、〈ゲジョシ・チェックリスト〉というのを見つけ出した。

「ゲジョシ」とは、40~50代の、権威的で自身の利益のためには他人の迷惑を顧みない男性のことを指す。女性や社会的弱者には強いが、立場が上の人には弱いのが特徴。次の項目のうち、一つでも該当すれば、あなたもゲジョシだ!