「韓国は基本的に外見に対する関心が強い国ですが、これは他人の目を強く意識する体面文化のせいです。ブランド物を持つのと同じ感覚で、容貌を整えて他人から認められたいという欲求があります。こうした『外貌至上主義』の社会では、外見も、お金や学歴、スキルと同様に、人が持つ資本の一つと見なされます」
韓国化粧品業界によれば、不況の中でも、男性化粧品市場は急成長しているという。2008年に約6000億ウォン(約550億円)だった男性化粧品市場は、毎年10%以上の成長を続け、2013年には1兆ウォンを超え、2018年には1兆2000億ウォンまで拡大した。
厳しい競争社会の中で、若々しい顔を「スペック」の一つと捉え、時間やお金を投資する男性が増えているのだ。
40代でリストラ候補、過酷な生存競争
韓国の10大企業の一つ「ポスコ」(POSCO)のIT関連会社「ポスコICT」のチョン・ジェヒ理事は、大学でコンピューター工学を学んだ後、1990年に現在の会社に入社した。仕事をしながら大学院に通い、経営学博士も取得。そして、入社から28年後の2018年、ついに理事(平取締役)に就任、役員の座を射止めた。
「私は同期よりも2~3年遅れて役員に昇進しました。普通なら49歳か50歳くらいで初の取締役になります。しかし、昇進が遅くなったのは、むしろ良かったと思っています。入社同期のうち、すでに半数以上が退職していて、私は今年で54歳だから長く持ちこたえたほうなんです」
「役員に昇進すると、その次からは2~3年ごとに改選される役員の椅子をめぐって、30人ほどで競争しなければなりません。昇進レースから脱落したら、もう辞めるしかありません。韓国の大手企業の生存競争は殺伐としています。毎朝、出勤してIDカードを当てるとき、オフィスのドアが開かないと胸がどきどきします。とうとうクビになったのかって」
「うちの会社では、今年も100人程度のリストラが予定されています。40代後半から50代で、ここ3年間の実績を基に対象者を選びます。おかげで会社の雰囲気は氷のようです。それでもうちの会社はまだましです。サムスン電子では、40代になると、もうリストラ候補になります」