「星」を目指したサラーリマンの本音

大手IT企業の東京支社に勤めるユン・ドンウォン次長は、すでに昇進をあきらめている。

「役員への昇進は、もうあきらめました。海外支社の主な業務は、本社から出張してくる役員をアテンドすることです。韓国の本社に勤務していた頃に比べると、ここでは本当に気楽です。私の年齢で海外支社に出されたということは、すでに出世コースからは外れたことを意味します」

「東京勤務を終えてソウル本社に戻っても、さほど良いポストは期待できません。通常、海外勤務は3年が原則ですが、1~2年延長も可能です。どうせ出世はあきらめたので、なるべく長くこっちにいて、家族と旅行したり、プライベートの時間を楽しみたいです。韓国に帰ったら、また生存競争が始まりますから」

理事から始まる役員職は、すべてのサラリーマンが目指す「星」のような存在だ。ほとんどのサラリーマンは、この「星」に辿り着けるよう努力を惜しまない。しかし、大半は星に手が届かないまま、途中で脱落するのが現実だろう。

49歳、54歳、在職は2年…

2014年10月、企業評価サイトの「CEOスコア」は、韓国30大企業グループの上場会社184社を対象に、社員に占める役員の割合を調査した。それによると、入社して役員にまでなれる確率は0.87%。つまり、役員の座につけるのは、115人のうち一人ということだ。

韓国の企業では、実力さえあれば、比較的若い年齢で理事職につける。大手企業の役員人事が行われる5月になると、サムスン電子や現代自動車など、韓国を代表する大手企業で30代の取締役が誕生したというニュースがマスコミをにぎわす。

しかし、早く咲く花は早く散るもの。大手企業の役員の平均在職期間はたったの2年だ。企業情報分析会社の「韓国CXO研究所」は、2018年、韓国の売上高上位の10大企業の退職役員を対象に、役員たちの平均年齢と勤務年数などを全数調査して発表した。

これによると、韓国の10大企業で、初めて役員に抜擢ばってきされる平均年齢は49.6歳、役員から退いた平均年齢は54.2歳だった。役員に抜擢されてから辞めるまでの役員在職期間は、2年が20.9%で最も多かった。次に3年(13.4%)、5年(11.6%)、6年(10.1%)の順である。役員になってからわずか1年で辞めたケースも5.4%あった。

CXO研究所のオ・イルソン所長は、この調査結果を「四九開花(49歳で役員に抜擢)、五四落花(54歳で役員退職)、花二絶頂(役員在職期間は2年)」と表現する。

「法的な定年は60歳だが、実際に企業内部で体感する退職年齢は、50代前半とはるかに低いのが現状です」