韓国で「ビットコイン・ゾンビ」と呼ばれる若者が増えている。どうせまともな仕事には就けないと、お金と時間を仮想通貨につぎ込んでいるのだ。ジャーナリストの金敬哲氏は「史上最悪の失業率や所得格差の拡大によって経済的弱者に追い込まれた韓国の若者たちは、仮想通貨で人生逆転を夢見ている」という――。

※本稿は、金 敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義「無限競争社会」の苦悩』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

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世界一熱かった韓国の仮想通貨ブーム

「仮想通貨元年」と言われた2017年、韓国の仮想通貨ブームは世界のどこよりも熱かった。2018年3月7日に発表された、韓国金融投資者保護財団の「2017年仮想マネー利用者調査」(20~69歳までの都市居住者が対象)によると、回答者の13.9%が2017年中に仮想通貨に投資した経験があると答えた。

金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義「無限競争社会」の苦悩』(講談社現代新書)

特に、20代の22.9%、30代の19.4%が仮想通貨に投資した経験があるとし、韓国の仮想通貨ブームは若い世代が牽引していることがわかった。韓国最大の仮想通貨取引所である「ビッソム」の資料によると、韓国市場の月別の仮想通貨取引額は、2017年12月に56兆2944億ウォン(約5兆1000億円)と、同年1月(3000億ウォン)の187倍にも達した。たったの1年で、コスダック(韓国版ナスダック)市場の月平均取引額の80%を超える規模にまで成長したのだ。

韓国では現在、300万人以上いると言われている仮想通貨投資者の60%が20代と30代だ。一攫千金を狙う若者たちと、「シードマネー(種銭)」で結婚準備やマイホーム購入のためのまとまった金を作ろうとする若い層が、仮想通貨市場に殺到したのだ。

2018年1月、韓国の地上波放送SBSは、仮想通貨に8万ウォン投資して280億ウォン儲けたという23歳の青年のインタビューを放送した。しかも、インタビューをしている2時間の間に約30億ウォン増え、その場で2000万ウォンを現金化する様子を流し、多くの韓国人を驚愕させた。