「人生逆転」を夢見る追い込まれた若者

史上最悪の失業率や所得格差の拡大によって経済的弱者に追い込まれた韓国の若者たちは、仮想通貨で人生逆転を夢見ている。

専門家たちは、韓国の青年層が仮想通貨に入れ込む背景として、①所得・貧富の格差など社会格差の拡大、②機会の不平等、③相対的はく奪感などを挙げ、若者たちの間に様々な社会的問題を解決するより現実から逃げようとする態度が広がっていると指摘する。

つまり、正常な方法でお金を稼ぐよりも、一攫千金を夢見る土壌が出来上がっているということだ。就職をあきらめて、お金と時間を仮想通貨につぎ込む若者たちを、韓国では「ビットコイン・ゾンビ」と呼び、大きな問題になっている。

インターネットの仮想通貨コミュニティでは「銀行から融資を受けて、仮想通貨に投資している」という書き込みで溢れており、金融監督委員会は、信用貸出が急激に増加したことと仮想通貨の関連性について調査を行っている。

米国のブルームバーグ通信は2017年12月に「韓国ではビットコインがブームとなって爆発的な広がりを見せ、一種の『グラウンド・ゼロ(爆心地)』状態になっている」と警告したほどだ。

文在寅政権が規制案を示すが…

仮想通貨市場が過熱し、これによる被害が社会問題化すると、韓国政府は仮想通貨取引を厳しく規制する案を速やかに検討すると公式に発表した。これまでに文在寅政権が打ち出した規制案は、韓国内のICO(新規仮想通貨の公開)の全面禁止(海外のICOに対する韓国人の投資は可能)、取引実名制の導入、取引所に銀行が仮想口座を新規開設することの全面禁止などだ。

しかし、政府のこうした規制に対し、韓国の若者たちは怒りの声をあげている。大統領府の国民請願の掲示板には「政府はこれまで一度でも国民が未来を夢見ることを許してくれたことがあったか!」というタイトルで、仮想通貨規制に反対する請願を掲載し、20日間で20万人を超える賛成票を獲得した。

インターネットでは「総選挙の時に、与党や政府を懲らしめてやろう」というスローガンが、長期間、検索語の1位を記録した。今、韓国の若者の間では、いくら頑張っても親から受け継いだ地位を変えることはできない、自分の階層は変わらないという考えが支配的だ。

階層移動ができなくなった社会で、「仮想通貨だけが投資した分だけ稼ぐチャンスを得られる。公正に機会を与えてくれる」と、彼らは主張するのだ。