「マウント、上からの押しつけが、一番嫌われます。『知ってる』はNGワードと言ってもいい。知らないふりして『へえー』と全部聞いて、『じゃあ今度みんなで行こうか。奢るよ』くらいでないと。話題のタピオカの話をするにしても、『タピオカってあれだろ、南の島でヤシの実みたいに木になってるやつだろ』と1度ボケてみる。そうしたら『違いますよ』と突っ込んでもらえるでしょう? 会話をできるだけボケとツッコミのキャッチボールにしていくことが話し上手への第一歩です」

明石家さんまの話が「ものすごく面白い」ワケ

自慢やマウントに加えて、野呂氏がやめてもらいたいと語るのが「デリカシーのかけらもない質問」だ。オジサンはずけずけとプライバシーに踏み込む質問をしてしまいがちだという。

「『彼氏はいるのか』とか、『子どもはつくらないのか』とか、そもそもセクハラ、パワハラですし、大きなお世話です。さほど関心があるわけではなく、何の気なしに聞いているだけだとしたら、なおタチが悪い。その後の話の展開も考えずに適当に話題を振るのはやめてほしいと思います」

しかし、そう言われると「では何を話せばいいのか」と思ってしまい、気まずい沈黙が続くことになりかねない。そんなときは、「仮説」をぶつけてみると話題が広がりやすいと野呂氏は続ける。

「出身地を聞くにしても、ストレートに聞くのではなくて、『その名字って、もしかして九州出身?』など予想して言ってみる。当たっていてもいなくても、会話の糸口となります。ポイントは『あなたは○○なのでは?』というように、主語を自分ではなく、相手にすること」

こういった仮説や相手を主語にした話し方をする「話のおもしろい人」の代表が、明石家さんま氏なのだという。

「意外に思われるかもしれませんが、さんまさんはたくさんしゃべっているように見えても、自分のことはほとんど話していません。相手の身につけているものなどから、いつも何かきっかけを見つけて『それってあれやろ?』と仮説をぶつけて話を広げていきます。

そして、オーバー気味のリアクションをして笑いを取り、相手を気持ちよくさせる。さらに、気持ちよくなった相手が繰り出してきたネタから、またおもしろそうな話題を見つけて盛り上げていくのです」

野呂氏は、「しゃべりすぎないこと」も話がおもしろい人の条件だという。さんま氏はしゃべり続けているように見えるが、会話の総量をチェックしてみると、相手の半分も話していないのだとか。

「おもしろい人は、実はあまりしゃべっていません。さんまさんは、自分がおもしろい話をする以上に、相手からおもしろい話を引き出すことで『さんまはおもしろい』と思われているのです。だから相手を気持ちよくしゃべらせることが何よりも大事。これがおもしろい人になるための第一条件といっていいでしょう」

▼話が絶望的につまらない人の7つの共通点
①自慢話
人は自慢話をされるのが一番嫌い。自分が行ったおいしい店の話、優れた家族の話などは、事実であったとしても意識して控えたい。
②謙遜しすぎ
「私なんて……」「失敗ばかりで……」と卑下しすぎると“単なるダメな人”と思われてしまう。失敗談は共感を誘う笑い話に変えて伝える。
③みんなが知っている話
日経新聞に載っている話はビジネスマンなら知っているから言わなくていい。二次情報ではなく、自分が体験した一次情報をネタにすること。
④定型文
雨の日は「足下が悪い中……」という決まり文句より、「大丈夫ですか? 使ってください」とタオルを差し出すほうが相手の心をつかめる。
⑤自己紹介が下手
職業、会社名、役職など、名刺を見ればわかることは言わなくてよい。「自分が何をしているのか」という行動と絡めて話すと、話が広がる。
⑥押しつけ
特に若い人たちの話に「それ、知ってる」と割り込み、押しつけるのはNG。知っていても「知らないふりをして教えてもらう」スタンスで。
⑦デリカシーがない
恋人や子どもの有無、婚姻状況など「聞いてどうするの?」という質問はNG。話の展開を考えず「とりあえず聞いてみる」のは最悪手。
そのほか、問いに対する答えがズレていて相手をイラつかせる、聞いている人が不快に感じる笑えない毒舌、下ネタを披露するなども「話がつまらない人」の特徴として、野呂氏は挙げる。※野呂氏への取材をもとに編集部作成。