ボケるのは最高のおもてなし
コミュニケーションの目的とは、そもそも何だろう。情報交換や共有だけが目的なら、おもしろくする必要性はない。野呂氏は、「相手に心を開いてもらう、心が通じ合うことがコミュニケーション」だと強調する。
「そのために最初にやるべきことが相手にできるだけたくさん話させることなのです。そうするためにボケてみたり、相手に仮説をぶつけてみたり、話題のタネになるようなものを持ってみたりすることが必要になる。
自分の意見や考えを言うべきタイミングというのは、実はかなり限られています。求められていない場でそれをすると、相手は心を閉じてしまうでしょう。普段はできるだけ相手の意見を引き出し、それに反応することに集中するべきなのです」
「しゃべることは、自分のキャラクターをつくるためのひとつの手段」と言う野呂氏は、そのキャラクターを相手に合わせてカスタマイズし、使い分ける。おもしろいかどうかは、自分が決めるのではなく相手が決めること。
であれば、話し方も話す内容も、相手のタイプや趣味嗜好に合わせて変えたほうがおもしろいと思われ、心を開いてもらえる可能性が高まるというのが持論だ。
「相手に合わせて、カメレオンのように自分を使い分けるのです。こう言うと『相手次第で態度を変えるイヤな人間』と思われるかもしれませんが、会社の同僚と話すときのあなたと、家族と話すときのあなたは同じ話し方をしていますか?
多かれ少なかれ、誰もが相手に合わせて自分をカスタマイズしているのです。それをより細分化し、より相手の視点に立って調整するだけ。すべては相手と楽しいコミュニケーションを取るためと思って、意識してやってみてください」
ここまで挙げたなかで、難しいのは「ボケ方」かもしれない。相手に突っ込ませるようなところを持てと言うが、どんなふうにボケれば相手が突っ込んでくれるのかわからないという人は少なくないだろう。野呂氏は「ボケるならわかりやすく、壮大に」とアドバイスする。
「中途半端にボケると相手に伝わらなかったり、頭が悪い人と勘違いされたりする恐れがあります。以前、時代劇で主役級を務める大物俳優を囲む飲み会に大遅刻した人がいました。その人は大物俳優のところに馳せ参じ、『ご尊顔を拝し祝着至極に存じまする』と言ったそうです。そうしたら大物俳優も相好を崩して『苦しゅうない。近う寄れ』と返したとか(笑)」
確かに、そこまでボケれば相手も「そうきたか」と笑うしかないだろう。
「多くの人が勘違いしていますが、ボケるというのは、おもしろいことを言うのが目的ではありません。相手のことを思って、こう言ったら心を許してくれるんじゃないか、言葉を返しやすいんじゃないかと考えることが目的なんです。自分目線ではなく、相手目線で考えて発するのがボケなのです」
・自分でボケて、自分でツッコんで、自分だけ笑っている(40代男性)
・「おもしろい話があってね」と自分でハードルを上げる(40代男性)
・人の会話に無理やりねじ込んできて的外れな発言や自分語りをする(30代男性)
・「要するに……」という前置きから後が長い(40代女性)
・オチをはじめに言ってしまう(40代男性)
・自分の話を「で、どうなったと思う?」と、質問形式で展開する(40代女性)
・質問を投げかけても見当違いの回答を延々と返してくる(40代男性)
・聞き手に「こう反応すべき」と決めてかかって話す(50代女性)
・「私って○○じゃないですかー」と前置きし、同意を求める(50代女性)
・全部自分の話にもっていく(20代女性)
「話がつまらない人」として、もっとも多く挙げられたのが「自慢話をする人」。自慢話に限らず、自分の話、身内の話は嫌がられる傾向だ。ほかにも聞き手をいらだたせる事例が集まった。※webアンケート調査をもとに編集部作成。
放送作家
PRコンサルタント。放送作家として『奇跡体験!アンビリバボー』など人気番組を手がける。同時に有名企業の戦略的PR コンサルタントを務める。著書に『「話のおもしろい人」の法則』など多数。