部下のやる気を引き出すには、どうすればいいのか。リーダー研修の講師を多く務める伊庭正康氏は、「責任感のある上司ほど、細かく指示を出しすぎる。重要なのは、部下の自己決定感を引き出すことだ」という。そのやり方とは——。
※本稿は、伊庭正康『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再構成したものです。
部下の主体性を引き出す鍵は「自己決定感」
部下から質問を受けた時、すぐに答えを言ってあげたくなりませんか?
でも、答えを先に言うのは、得策ではありません。
自主性を促すなら、「自分が、考えて決めた」といった感覚が極めて重要だからです。この感覚を「自己決定感」と言います。「内発的動機づけ」研究の第一人者であるロチェスター大学のエドワード・デシ教授らにより提唱されました。
下の図をご覧ください。自己決定感にも段階があるのですが、「内発」「統合」「同一化」といった“自分で決める”という感覚を持ってもらうことが、主体性を引き出す上では重要。つまり、細かくアレコレと指示をする上司より、考えさせてくれる上司のほうが部下は主体性を発揮することが、学問的にも証明されているのです。
この自己決定感の有無は、「失敗した時」に違いが出ると言います。
うまくいかなかった場合、自己決定感があると、なぜうまくいかなかったのか、どうすればうまくいくのか、といったように“改善”に結びつくのですが、自己決定感がないと、「難しかった」「面白くない」といった負の感情だけが残るのです。