収入は世間並みだが、都内に戸建てを買ったり、高級外車を頻繁に買い替えたりする若い世代がいる。彼らは何者なのか。野村総合研究所の宮本弘之氏は「親や祖父が1億円以上持つ人20代~50代を『親リッチ』と名付けた。彼らは235万人に上り、裕福な親たちから支援を受けながら生活を楽しむ『隠れた消費の主役』になっている」——。

※本稿は、宮本弘之『親リッチ』(日本経済新聞出版社)から一部を抜粋、再編集したものです。

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親の財布で身の丈以上の生活をする「親リッチ」

都内に住む30歳の専業主婦大野果林さん(仮名)は、公益団体に勤める夫と結婚し、2人の子どもを育てています。夫の収入は安定しているものの、世間水準と比べてさほど高くもなく、ごく普通の生活をしているように見えるのですが、23区内に一戸建ての自宅を持ち休みの度に家族で海外旅行に出かけています。

車も、BMWやアウディを毎年のように買い替えています。実は、果林さんは、精密部品の会社を経営する両親の下で生まれ育ち、結婚式の費用も、マイホームや自家用車の購入費用も、ほぼすべて親に出してもらいました。果林さんの自宅は、実家のすぐ近く。車で5分ほどなので日常的に親元に顔を出しています。

果林さんは、親との関係について次のように話しています。「子どもが生まれてからも、誕生日や入学の度にお祝いをもらい、子どもを連れて両親と旅行や食事に行く時もすべて親が払ってくれます。正確に計算したわけではありませんが、家計費の3割くらいは親に出してもらっていることになります」

「父の経営する会社では、跡を継ぐ予定の兄が働いています。父は兄を幼い頃から厳しくしつけてきました。それに比べて娘の私は甘やかされて育てられたような気がします。やっぱり、父親にとって娘は目に入れても痛くないほど、可愛かわいい存在なのでしょう」